番外編『俺のこと、なんか言ってた?』-Netflix

今回は番外編。配信ドラマですが好きな役者さんがたくさん出てるので。
『俺のこと、なんか言ってた?』(脚本:宮藤官九郎 / 監督:金子文紀)全8回、観終えました。

クドカンの舞台ラブが炸裂だ!
最近はドラマや映画の脚本での活躍が多いが、やっぱりクドカンは舞台をやりたいんだよね!って。

1回目でまず度肝を抜かれた。ロンドン、グローブ座を思い切り使い切っての大ロケ。オマケに雨まで降らせちゃうし!
クドカン得意のコメディーで、時代は現代から数年後まで。SF的な設定が絡んでいる。
途中、何を言ってもネタバレになってしまうので、最終回に飛ぼう。〆は下北沢のザ・スズナリだ。
グローブ座は、「大掛かりなオープング! Netflixは金があるな~」と思ったが、ザ・スズナリは客席数100ちょい。1981年オープンで大きな改装もしていない。席はパイプ椅子。しかし小劇場・小劇団にとってはなくてはならない貴重な劇場だ。
ザ・スズナリが主な舞台となる最終回(8回目)では、クドカンと役所広司の演劇への愛が深~く伝わってきた。

基本はコメディー。舞台、映画、テレビの世界の裏話を面白おかしく見せながら、俳優とは… 演技とは… を問う壮大な試み。で、縦線は「マズローの五段階欲求」に深~く、そして執拗に絡む。

何と言っても役所広司(大物舞台俳優 高瀬川玄)が凄い! グローブ座での『リア王』から時代劇のエキストラまで。劇中劇で様々な役を演じる。役所広司だからこそ成立したドラマだ。

松山ケンイチ(助監督)は本当に素晴らしい俳優だと思う。深く入り込んだ役作りには、いつもながら感動。松ケンの芝居は技ではない。心だ! と思う。助監督役だから余計に感情移入しているわけではありませんよ(笑)。
コメディーなので、他の俳優は皆、多少オーバーな芝居をしている。コミカルな動き、セリフもある。しかし松ケンは徹底してリアリズムで押し通している。本人の判断なのか、クドカンの指示なのか、演出の狙いなのかは分からないが、本作の松ケンの芝居はシリアスドラマでも通じるものだった。これは見どころだ。

坂井真紀(高瀬川が転がり込むサウナの事実上の店長)。怪演の類だが見事だった。岩手出身で韓国語ペラペラ。口癖の「ケンチャナヨ」を覚えてしまった(笑)。

賀来賢人(サウナ従業員・小劇団の座長兼劇作家)。8話を通じて、人間としてもっとも成長する役。最初は風采が上がらないが、最後には泣かせた。クドカンはこの役に自らの歩みをダブらせていると思う(クドカンは『大人計画』の演出助手・脚本家からスタートしている)。

江口のりこ(高瀬川の2度目の妻)。独特の空気感! カードの裏表みたいな2つの顔が怖かった。それは素晴らしい芝居という意味。

吉田羊(高瀬川の最初の妻)。揺れ動く感情を見事に演じてくれた。「芝居は“目”だよね」と再認識。しっかりクドカン一家の要になった感がある。

河合優実(最初の妻との間の娘)。『不適切にもほどがある!』ではスケバンを好演していた。この人、役柄への感情移入凄いわ! 「コンカフェってこういう世界だったのか!」と。イカンイカン、ネタバレになる(笑)。

磯村勇斗(小劇団の看板俳優)。高い身体能力を生かした芝居がフル回転。ピリリと利いたスパイスになっていた。本作には様々なタイプの演技が混在しているが、磯村勇斗はその1つの極をなしていた。『不適切にもほどがある!』での“マッチ”ならぬ“ムッチ”の好演が印象深いが、今回はそれを超えたかも。

SF的な設定については、「ちょっと甘いかな」とは感じたが、ド迫力の最終回で忘れてしまった。払拭されたとは言わないが(笑)。
配信ドラマの最終回って、「結局、そう収めたわけね…」と感じることが多いが、本作には当たらなかった。クドカン得意の伏線回収も見事。
最後の最後で役所広司が「役者とはかくあるべき!」を熱弁するが、これはちょっとストレートすぎたかな… とは思った。
ツッコミどころは幾つかある。完全無欠の大傑作ではない。しかし爆笑ストーリーの裏に舞台ラブを深く潜ませた温かい作品だった。

海外でも配信されてるので、クドカンドラマがどんな評価を受けるのか… 少し楽しみではあります。