『プロジェクト・ヘイル・メアリー(Project Hail Mary)』は科学的友情物語!?

SF大作映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー(Project Hail Mary)』を観ました。
【原作:アンディ・ウィアー 監督:フィル・ロード&クリス・ミラー】
近くの映画館で見逃してしまいAmazonプライムで。Amazon(Amazon MGMスタジオ)がメインの製作会社だから早い! とは言え、一部の映画館ではまだかかっているので、イイのかなぁ~と思いつつ(笑)。
“Hail Mary”とは、元々は「聖母マリアへの祈り(アヴェ・マリア)」を意味するが、現代では「イチかバチかの大勝負」とか「最後の望みをかけた必死の試み」という意味の慣用句として使われるそう。
主役は中学の理科教師グレース(演:ライアン・ゴズリング)。天才分子生物学者だったが、天才過ぎて学会から干されているという設定。
ストーリーの起点は、「太陽エネルギーを喰い尽くしてしまう微生物によって太陽が暗くなってしまい、30年以内に壊滅的な地球寒冷化が起こる。さぁ、どうする?」というところ。
かつて書いた論文が突然注目を集め、グレースは地球を救うためのイチかバチかの大勝負“プロジェクト・ヘイル・メアリー”のメンバーに無理やり抜擢されてしまう。
地球を救う“何か”を探すために、宇宙船『ヘイル・メアリー』は太陽系から12光年も離れた天体へ。
もう1人(?)の主役は、エリダヌス座40番星出身の異星人ロッキー。ロッキーもまた自分の星を寒冷化から救うため、自分の宇宙船でグレースと同じ天体を目指している。
身体はゴツゴツとした甲殻で覆われクモかカニに似た見た目だ。楽器のギロのような凹凸のある腕を他の腕で擦って音を出す(言葉を発する)。
グレースがラップトップコンピューターでロッキーの言葉を翻訳するシステムを開発。互いの故郷の星を救うための共同作業が始まる。
SF的にはかなり手の込んだというか、難しい設定になっている。
ストーリーや設定を完全に理解するには、特殊相対性理論、光合成に関する深い理解、材料工学の知識などが必要になる。
原作では詳しく説明されているらしいが、映画の中ですべてを科学的に理解するのは難しい。よほどの科学的知識+豊かなSF的想像力がないと、間違いなく沼にはまってしまう(笑)。
じゃあ、このSF映画はどう観ればイイのか?
地球人のちょっと変わった、でも人のよい科学者とエンジニアである異星人との友情物語なのだ。
科学的な設定は、例えば、『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲とかワープのレベルで捉えておけばよいだろう。“科学”ではなく、“空想科学”として。
過去の数々の名作SF映画に奉げたオマージュは心温まるものだった。
『2001年宇宙の旅』『惑星ソラリス』『未知との遭遇』『E.T.』など。
グレースとロッキーのファーストコンタクトでは、『未知との遭遇』のあの5音が。『2001年宇宙の旅』でウインナワルツがかかっていた宇宙船の飛行シーンではタンゴが… 思わずニヤリとしてしまった。
ヘイル・メアリー内の最初のシーンで、「なんでこの宇宙船内には重力があるんだ?」と思ったが、回転構造を利用して人工重力を生成という設定になっている。ストーリーが展開する中で、人工重力が切れて無重力になる場面もある。「重力有り→無重力」、あるいは、「無重力→重力有り」はもの凄くたいへんな撮影だったと思う。
NASAの全面協力を得て制作したと言うだけあって、他にも映像的に驚かされるシーンがたくさんあった。特に宇宙遊泳(船外作業)などは素晴らしい迫力と映像美だった。
ちなみに、本作ではグリーンバックの合成は一切使っていないそうだ。もちろんすべてが実写というわけではなく、CG合成はふんだんに使われている。
困難な撮影下でのライアン・ゴズリングのリアリティ溢れる演技は好感が持てた。
プロジェクトリーダーのエヴァを演じたザンドラ・ヒュラーも印象に残った。強引で冷徹、しかし… 内なる葛藤が痛いほど伝わってきた。
そして、もう1人の出演者ロッキーだ。
この映画を思い切り楽しめるかどうかは、異星人であるロッキーに感情移入できるかどうかにかかっていると思う。私はどうだったか?それは秘密にしておきます(笑)。
で1つだけ。
宇宙船ヘイル・メアリーの内部は地球の大気に近い気体で満たされている。室温は21℃~25℃。気圧は1気圧だ。一方のロッキーが生きている環境(空気)は、29気圧210℃の気体アンモニア。ロッキーはその気体アンモニアで満たされた宇宙服をまとわなくてはヘイル・メアリーに入ることができない。この宇宙服が透明アクリルのように見える。29気圧210℃に耐えられるわけがない。これは納得いかん!
…と、やっぱり科学が気になったところはありました(笑)。

