『黒牢城』(黒沢清監督)

『黒牢城(こくろうじょう)』は、黒沢清監督が初めて挑戦した時代劇。米澤穂信の人気小説を原作とする戦国ミステリーだ。
これはカンヌで受けるわ!
今年のカンヌ映画祭プレミア部門に出品。1000人の観客総立ちのスタディングオベーションを呼んだという。
原作の力が大きいと思うが、ミステリー仕立てがよく出来ている。謎が謎を呼ぶ展開。さらに推理小説のような見事な解決。ところがその解決の先には… というハラハラドキドキが続く。
映画的には、光と影を駆使した映像美。有岡城(=黒牢城)内部のセットも見事だった。
カメラワークはとても原則的だ。手持ちカメラは一切なし。ドローンショットもなかったような気がするが、使っていたとしても最低限だ。移動車と撮影用クレーンを多用し俳優の芝居を追いかける伝統的な手法。ワンカットワンカットに監督の美意識が貫かれていると感じた。
俳優たちの好演。特にモッ君、菅田将暉、オダギリジョー、柄本佑が印象に残った。
吉高由里子は個人的にはシックリこなかった。なんかこの人の芝居は起伏が弱い気がする。好みの問題か(笑)。
モッ君はもちろん本木雅弘。『ファンシイダンス』(1989年)、『シコふんじゃった。』(1992年)からすでに35年ほどの月日が経っている。
凄い役者になったものだ!とあらためて感動した。
個人的には陶磁器ファンなので、茶壺の名品『寅申(とらさる)』が、ストーリー展開上重要な役割を果たしたのは嬉しかった。
寅申は現存しないが、映画の中では信楽焼の茶壺としたようだ。このあたり正確な時代考証があるのか興味深い。
ひとつだけ気になったのは言葉づかい。
いわゆる時代劇の「ござる言葉」を踏襲している。黒沢清監督、悩みに悩んだ末に決断したのだと思うが、わたし的には現代口語でやって欲しかった。
黒沢明が『七人の侍』で現代口語時代劇にチャレンジし、成功を収めてから半世紀以上が経っている。いまだに、「ござる言葉」から脱することができないのは何故なんだ!?
…とまぁ、最後は辛口になってしまいましたが、時代劇があまり好きではない私でも十分に楽しめました。時代劇と言うより大胆なミステリー作品と思ったほうがよいかも知れません。
それでも私の頭の中には、荒木村重はモッ君の顔、黒田官兵衛は数々の名優が過去に演じてきているのに完全に菅田将暉の顔として焼き付いてしまいました(笑)。

