『新宿発8時15分』作・演出 三谷幸喜

三谷幸喜の『新宿発8時15分』を観てきました。

1200席を超える日本青年館ホールは完全満席。大爆笑のミュージカル仕立て新作舞台です。
天海祐希、香取慎吾、尾上松也、シルビア・グラブなど超豪華メンバー!15人の俳優が100役以上を演じます。
脚本も演出もかなりチャレンジング。このメンバーを揃えてよくこの挑戦的な舞台を!

私、実はミュージカルが苦手(笑)。どうしても、「突然歌い出す唐突さ」に付いていけないのです。
で、パンフレットを読んでまず苦笑い。三谷さん自身も、同じことを感じていたのです。
「だったらいっそのこと全編歌にしてしまえ!」という発想で書いたのが、『新宿発8時15分』だったと。

となると音楽は…
作曲家荻野清子が率いるジャズカルテット仕立ての生バンドです。三谷幸喜+荻野清子では、『日本の歴史』というミュージカルがありましたが、この時は、ジャズではなかったはず。
セリフを受けてピアノが入る。ドラムを受けてセリフが入る。凄い緊張感のはずなのにバンドメンバーは皆嬉しそう楽しそうに演奏している。
ジャズカルテットと役者がスイングしている!!! って、私には奇跡的に見えました。

電車が人身事故で止まってしまった。たまたま駅に居合わせた人々のそれぞれの事情、いや、それぞれの人生を縦横無尽に絡ませてストーリーを構成している。三谷さん自身の小田急線での経験が発想の出発点だったという。
小田急、京王沿線に住む私としては、細部でピンとくるところが幾つもあった。
「小田急線の快速急行は急行より速い」とか、「京王線の区間準急は快速より速いのか?」とか(笑)。いずれも歌になっています。

俳優陣、全員素晴らしかった! 少しだけ書けば…
天海祐希。主な役は、常に苦渋の決断を迫られる運転司令センター長と電車の遅延で生徒が来なくて時間を持て余す料理研究家。いやもう言うことなし! 歌、表情、身のこなし、すべて120点です。
香取慎吾。いつも嬉しそうに芝居をする人だな、と思っていましたが、今回はいつもにも増して… ニュースキャスターと警官。楽しみきっているのが伝わってきました。
小林隆。輝いていました。コンビニの面接に向かう中年男。個人的には一番感情移入していたかも…
浅野和之は技の玉手箱!演出によっては少し嫌味に見えてしまうこともあるのだが、三谷さんとのコンビでは心配無用。三谷⇔浅野の深~い信頼関係が感じ取れました。
シルビア・グラブ。この舞台、シルビアがいなかったら成立しなかった… とさえ思わせました。

で、「突然歌い出す唐突さ」は解決されたのか…
通常ならセリフになる部分を歌にしていたし、なにしろ歌が多い。それによって歌とセリフの落差を感じることは少なかった。
一方、重要な役である天海祐希の運転司令センター長はソロを歌わなかったと思う。今回の舞台で私に残った唯一の残念(笑)。ちなみに料理研究家はたくさん歌います。

ラストの展開、素晴らしかったです。
大団円のハッピーエンドかと思わせておいて… 終わり間近になって1人死んじゃうし、いったいこの芝居、どう〆るの? と心配になったくらいでした。
お見事! 今さらながら、三谷幸喜は大天才です。
ラストの一瞬、日本青年館ホールはカタルシスの渦に巻き込まれました。
カーテンコールがスタンディングオベーションになったのも当然です。

その時、近くの席にいた明らかに私よりも年上のご婦人が、天海祐希の写真を貼った2枚の団扇を手に、客席通路に飛び出してきた。娘とおぼしき女性が必死にそれを抑えようと… 宝塚時代からの追っかけなのでしょう。あらためて、天海祐希、凄い! と感動しました。