クラフトビール新時代か…

八千穂ブリューイングという醸造所が造るクラフトビールを飲んだ。ブランドとしては、『八千穂高原ビール』だ。
2021年12月設立というから、比較的新しいマイクロブリュワリー(地ビール醸造所/クラフトビール醸造所)だ。

時代を30年ばかり遡りましょう。
1994年の酒税法改正によって、日本でも小規模な醸造所でのビール醸造が可能になった。
第1号は、日本酒『越後鶴亀』で知られる新潟市の上原酒造が造ったエチゴビール。1995年2月誕生に誕生した。
1996年8月放送の『ワーズワースの冒険 夏だ!ビール祭り』の脚本・演出を担当し、開業間もないエチゴビールを取材したのが懐かしい。
ブラウマイスター(ビール醸造士)はケニア出身で、片言の日本語を喋っていた。彼が醸すビールはレベルが高いと、すでに評判になっていた。
番組では、まだ全国に数か所しかなかったマイクロブリュワリーをいくつか訪れた。旅人は、なぜかシェイプUPガールズとラッシャー板前(笑)。
当時、雑誌メディアでは、地ビール(当時はそう呼んでいた)が少しずつブームになってきていたが、テレビでは、『ワーズワースの冒険』が先駆けのひとつだった自負している。

で、もう一度、30年ほどタイムスリップ。八千穂高原ビールです。
今回、友人から頂いて飲んだのは、IPAとブラックエール。ともに上面発酵のイギリス系ビール(エール)です。
IPAは、スッキリとした嫌味のない苦みに加えて、シャープな柑橘香。品の良さが漂う1本でした。
ブラックエールは、イギリスではポーター、チョコレートエールとも呼ばれるカテゴリーだと思う。

エール系の黒ビールは、ポーターとスタウトに大別されるが、
ポーターは、「麦芽を高温で焙煎」。
スタウトは、「発芽していない大麦を焙煎」という違いがある。
スタウトのほうが、より際だった苦味、酸味、そしてコーヒーのような香ばしさを感じさせる。
言い方を変えると、スタウトは完全にエールの域を脱した別のビール。ポーターは、チョコレート香をまとった黒ビール(黒エール)と言えそうだ。
ちなみに、“ポーター”の名称は、かつてロンドンで荷役の重労働に従事していた運搬労働者(ポーター)が、この栄養価の高いビールを好んで飲んだからとも言われている。
「それって、酔っぱらい○○?」だが、おおらかな時代のこと、大目に見ることにしよう(笑)

能書きが長くなったが、八千穂高原ビールのブラックエールは、かなり完成度の高いポーターだと感じた。
スッキリとしたクリアな味わいの中に、明らかにチョコレート香があった。

八千穂高原ビールの特徴に、「テロワール」を前面に打ち出したビール造りがある。
テロワールとは、「ワインや農産物の品質・味を決定づける「気候、土壌、地形」などの自然環境要因を指す概念」だ。
標高1700メートル。長野県南佐久郡の八千穂高原に醸造所を構える。
北八ヶ岳連峰に降り注いだ水が伏流水となって湧き出す水源があり、ホップは自社農園で栽培したものを使用。年間を通して冷涼な気候も、ビール造りに適したテロワールの要素だと言う。

極論すれば、ビールは、水と大麦(一部、小麦を使用するビールもある)とホップがあればできる。大麦もホップも世界的に流通している農産物だ。日本だけではないが、都市のど真ん中のビール醸造所もある。それはそれで、出来たてのフレッシュビールを醸造タンクを目の前にして飲むという楽しみがある。世界中から選りすぐった最適な大麦とホップの組合せを優れた技術で最高のビールに仕立てる。それも1つのやり方だ。
一方で、新たに出てきたのが、テロワールを意識したクラフトビール。八千穂高原ビールだけではないが、日本には、自社栽培のホップを使用する醸造所がいくつかある。
日本のクラフトビールに新時代の到来か…
無類のビール好きとしては、目が離せなくなってきた。