甘味は料理の敵である!と、このことに関しては少し頑固です。わが家には砂糖も、味醂もありません。
しかし、お酒はちょっと別(笑)。時々、無性にデザートワインが飲みたくなります。電車を待つ間に立ち寄った駅ナカのスーパーで、ボルドーの貴腐ワイン「ソーテルヌ」を見つけ、これは買いだ!
「ソーテルヌ」は、ハンガリーの「トカイ」、ドイツの「トロッケンベーレンアウスレーゼ」とともに世界三大貴腐ワインと称されています。たまたま妻が買ってきたチョコレートケーキとともに頂くと、最高!デザートワインは、「一緒に食べるデザートよりも甘くなくてはいけない」といわれています。
しかし、なぜこんなに甘くできるのか?
ワインの甘さは、通常は原料のブドウの甘さによって決まります。当たり前と思われそうですが、実はちょっと理屈があります。
ブドウの実に含まれるブドウ糖と果糖が果皮に付いている天然酵母でアルコール発酵したお酒がワイン。もし、果実が持つすべての糖類をアルコールにできるなら、甘いブドウほどアルコール度数が高いワインが作れることになります。しかし、酵母はアルコール度数が10度から14度くらいになると、活動できなくなります。自分で作り出したアルコールで死んでしまうのです。
従って、原料ブドウが甘ければ甘いほど(糖度が高いほど)、分解できなかった糖分が残って甘くなると。
生のままで糖度が高いブドウを使えば、甘いワインができますが、限界はあります。ところが、成熟したブドウに貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)というカビの一種が付いて繁殖すると、果皮から水分だけが蒸発して、とても糖度の高い果実になります。このブドウで作ったのが甘~い甘~い貴腐ワイン。17世紀のハンガリー(トカイ地方)、戦争の影響で収穫が遅れたブドウが貴腐化したのが、ルーツといわれています。おそらく、「参ったな~、せっかくのブドウが腐っちまった。でも、もったいないから醸造してみるか!」といった、農家の駄目もとチャレンジから始まったのでしょう(裏取り無し(笑))。
もうひとつ、有名な超甘口のデザートワインとしてアイスワインがあります。ドイツ生まれで、今はカナダでもかなり作っています。こちらは、寒さでブドウの果実が凍るのを待って収穫します。凍るといっても水分だけ。これが霜柱のように実の外に押し出されて、糖度の高いブドウができます。
アイスワインも何種類か飲んだことありますが、これも禁断の甘味!美味しいです。
では、貴腐ワインとアイスワインでは、どっちが美味しいか?興味深い設問ではありますが…
あっちこっちのサイトに、貴腐ワインは「ボトリティス・シネレアが作り出すさまざまな物質が複雑な味わいを…」なんて書いてありますが、テイスティングで貴腐ワインとアイスワインを言い当てるのは、かなり難しいようです。ソムリエ選手権でも、世界有数のソムリエたちが悩んだ末に間違ったりしていますので。もちろん、私にも判断できません。
いずれにしても、甘いワインに酔いしれた夜でした。
ちなみに、グラスは、熊本の吹きガラス作家・島田真平さん。私の思い込みかも知れませんが、なんとなくエジプトの古代ガラスの趣があって、好きな器です。