アイラ島が生むアイラ党

20060415シングルモルトファンには笑われてしまう程度の知識しか無いのだが、密かにアイラ・モルトを飲み続けている。

スコットランド、グラスゴーの西にあるアイラ島がアイラ・モルトのふるさとだ。6~7年前に仕事でスコットランドに行った際に、地元の人(と言ってもロンドン在住)から「スモーキーなのが好きだったら、ラガヴァリンが良いよ」と薦められたのが、アイラ・モルトとの出会いだった。
ラガヴァリン(ラガブリンとも記す)は、最近大人気になっているアイラ・モルトの代表選手。ラガヴァリンに限らず、アイラ・モルトの特徴は強烈な燻蒸香だ。あと、ヨードの香りもするそうだが、残念ながら私の鼻では明確に分からない。

スコットランドでラガヴァリンに出会って以来、口にするウイスキーの8割方はアイラ・モルトに… いつの間にか、すっかりアイラ党になってしまった(笑)。

最もバランスが良いのは、やはりラガヴァリンだが、最近、人気になりすぎてプレミアム価格になっているのが癪だ。そこで、いろいろと浮気をしている。何の役に立つか分からないが、一応、個人的評価一覧を…

■アードベック(ARDBEG): 強烈な燻蒸香。バランスが今一では…
■ラフロイグ(LAPHROAIG): アイラの中では温和しい感じ。
■ボウモア(BOWMORE): サントリーが輸入しているので、国内では最も入手しやすい。入門版という感じ。
■ラガヴァリン(LAGAVULIN): 最初に出会ったせいもあるのだろうが、個人的にはアイラ・モルトのナンバー・ワン。強めの燻蒸香が「飲む緊張感」を与える。
■カリラ(CAOL ILA): 最近初めて飲んだが、言われているように「磯の香り」「潮の香り」があり、塩味さえ感じる。全体的なバランスはラガヴァリンに近く、結構好き!というのが個人的感想。

もちろん、熟成年数などによって味わいが違うのは分かっているが、大雑把には、上記のような感じを得ている。

別格!宍道湖のシジミ

やはり宍道湖のシジミは別格だった。小さなアサリ程度の大きさがある。東京では、料理屋で出されるシジミの味噌汁の身をほじって食べ良いものかどうか迷うことがある。あまりに小さくて、それに執着するのがケチに思えてしまうからだ。

しかし、宍道湖のシジミにはそんな心配は無用だった。しっかりと「食べてくれ!」と主張している。届いた晩は、さっそくシジミ三昧!といっても二種類しか作らなかったからシジミニ昧!?

まずは、ニンニクと鷹の爪、日本酒を使って酒蒸しにした。作り方は簡単で、鍋にニンニク・鷹の爪・シジミを入れ、日本酒をヒタヒタの半分くらい。火にかけて醤油を少々加える。
沸騰してくると次々に殻が開く。アクも出るので、これは引く。全部の殻が開いたら、シジミだけ取り出し、残った汁に同量程度の昆布だしを加え、一煮立ち。汁をシジミにかけて、細葱でも散らせば料亭でも出せそうな『シジミの酒蒸し』の完成だ。
ニンニクも鷹の爪も主要な成分は油にしか溶けないので、逆に油を使わないことで、味のバランスが良くなったようだ。シジミの香りが消えることなく生きたと思う。

仕上げはシジミの味噌汁にしたが、これはレシピ省略。
シジミが効いて、肝臓が良くなりすぎると困るので、いつもより一合余計に飲んでしまった(笑)。

一つ特記しておきたいのは、二つの料理で使ったシジミの殻がすべて開いたということ。スーパーで買ったシジミでは、こうはいかない。

たかがシジミ、されどシジミ

シジミは、肝臓に欠かせないタウリンを豊富に含んでいるので、「一杯飲った後のシジミの味噌汁」は、おまじない以上の効き目があるようだ。

さて、日本には三種類のシジミが生息しているが、主役はヤマトシジミ。それも島根県の宍道湖産が国内水揚げの45%を占めている。他の産地も宍道湖から稚貝を買って放流しているところが多いので、宍道湖がヤマトシジミの王様であることは間違いない。

しかし、数年前、宍道湖のシジミは風前の灯火になっていた。「宍道湖・中海の淡水化・干拓計画」が進んでいたからだ。ヤマトシジミは汽水湖でしか繁殖できないので、淡水化が実行されていれば、間違いなく死滅していた。
1963年に始まった淡水化・干拓計画が最終的に中止されたのは2002年のこと。元々、大規模水田開発のための事業だったが、途中で農政は減反一本やりに転じた。二束三文だったシジミは、他の産地が干拓や水質の悪化で水揚げを落とす中、宍道湖産の値が上がった。時代の流れ、政治の流れに翻弄され、淡水化・干拓計画は中止された。そして宍道湖のシジミは生き残った。

さて、せっかくだからシジミを美味しく食べるコツ。宍道湖のシジミ漁師から聞いた話だ。少なくとも、筆者はシジミの砂抜きの方法を完全に誤っていた。
まず大切なことは、海水の1/3程度の塩分の塩水で砂抜きをすること。淡水では味が抜けてしまう。そして、シジミをその塩水に沈めないこと。少し顔を出しているくらいが良いそうだ。
<a href=”http://www.saiko.gr.jp/sijimi/waza.html”>【シジミの砂抜き(詳細)】</a>
あと、目から鱗の話は、シジミは冷凍が効くということ。地元の漁師も、一番美味しい季節に砂ヌキだけして小分けして冷凍するそうだ。食べる時は、凍ったまま水に入れて、普通に味噌汁にすればよい。当然、殻は開く。
問題は、その「一番美味しい季節」。宍道湖のシジミ通たちに言わせると「卵を孕んだ5月が一番」というのと「卵を産んだ後の7月が一番」と二説が対立する。

たかがシジミ、されどシジミ。これは試してみるしかない!

ナウサの赤

久々にギリシャワインを飲んだ。ギリシャ北部のナウサという町の名前が、そのままワインの名前になっている。「ナウサ」はギリシャを代表する赤ワイン。この地方にだけ古くから伝わるキシノマブロ(Xinomavro:クシノマブロとも記す)という葡萄種で作る。
今回入手したのは、ナウサにあるギリシャ最大のワインメーカー=ブターリ社のものだ。

数年前、仕事でギリシャ全土を回ったことがあるのだが、その時にもっとも記憶に残ったワインが「ナウサの赤」だった。ブターリ社のワイン貯蔵庫にも入り、ズラリと並んだ木の樽に圧倒されたのを覚えている。

地元の人たちは「ナウサこそがヨーロッパワインのルーツだ!」と語る。そりゃ、ヨーロッパ文明がギリシャから始まっているのだから、そういうことも言えるかも… ギリシャでは、紀元前4世紀に今日のAOC(原産地呼称統制法)に近いワイン法が制定されたという記録もあるそうだ。紀元前4世紀といえば、アレクサンドロス大王とその父・フィリッポス2世の時代。ナウサのあるギリシャ北部・マケドニア地方は、アレクサンドロス大王の故郷でもある。

ちなみに、古代マケドニアの首都・アイガイは現在のヴェルギナという町にあったという説が有力。ヴェルギナの考古学博物館では、フィリッポス2世の遺骨が入ったまま発見された黄金の小箱や黄金の冠など、マケドニアの繁栄を今に伝える宝物を見ることができる。ナウサからヴェルギナまでは車で30分ほどだったと思う(正確なデータではない)。
アレクサンドロス大王やフィリッポス2世もキシノマブロワインを飲んだのか。それは定かではないが…

さて、今回のナウサの赤。とにかく葡萄そのものの味と香りが伝わってくる。ドライな味わいで、苦味・甘味・酸味のバランスも程良い。香りも高く、全体としての完成度はかなりだと思う。スペインのリオハに似たところもある。

ただ、現地で飲んだ時は「ブターリのは軽い」という印象を得た覚えがある。中小メーカーのもので、もっとヘヴィーなナウサの赤があった。地元では「ナウサの赤は重い」という評価が主だったと記憶しているので、他のメーカーのものも今度試してみよう。
ついこの間までは、日本ではブターリのものしか買えなかったのだが、ネットで見るといつの間にか数社の「ナウサの赤」が入ってきている。

ヒューガルデン・ホワイトを巡って

20060222ベルギーのヒューガルデン・ホワイト(Hoegaarden Biere Blanche)と言えば、世界で最も有名な白ビール。程良い酸味で、爽やかな味わいだ。パリのブラッセリーでも、ヒューガルデン・ホワイトの「生」が楽しめる店がかなり増えている(日本ではホントに限られた店だけ)。

そのヒューガルデンは、現在、世界最大のビール会社インベブ(InBev)社に、一ブランドとして所有されており、なんと、同社はベルギー・ヒューガルデン村にあるヒューガルデンのルーツとも言える醸造所を閉じ、市民や労働者から大きな反発を食っているらしい。

インベブ社は買収を繰り返して、今や世界最大のビールメーカー(醸造量ベースで世界の13%を占めるとか)になったそうだ。別に会社が大きくなっても、マイナーブランドのビールを大切に世界中へ届けてくれるなら良い。しかし、古い醸造所を次々と潰しているあたり、どうも信用できない感じだ。

日本ではベルギービールの輸入と併せて、ベルジアンビア・カフェを展開し始めている。ビールファンとしては、とにかく行ってみるしかないのだが、インベブ社には、それぞれのビールの歴史と文化を大切にしたブランド展開をお願いしたいものだ。

シリコンバレーの地ビール

シリコンバレーと共に育った地ビールがある。
ゴードン・ビアシュ(Gordon Biesch)だ。

最初にブルーパブを開いたのがパロアルト(Palo Alto: HPの本社があり、シリコンバレー発祥の地と言われる)で、それが1988年。以来、ハワイ、ネバダ、アリゾナ、ワシントンの各州にもブルーパブを開いている。どうやら、ITと歩を合わせるように共に伸びてきた地ビールのようだ。

今回は、サンノゼ(パロアルトとは15㎞くらいの距離)に泊まったのだが、残念ながらブルーパブには行けず悔しがっていたら、偶然入ったタイ料理屋にもゴードン・ビアシュ(瓶だけど)が並んでいて、まず感激!
完全にドイツ系のビールで、ピルスナー、メルツェン、ボック、デュンケルなどがある。また、白ビールもドイツ風にヘーフェ・バイツェンと呼んでいる。今回、飲んだ中で記憶に残ったのはメルツェンのコクを保った爽やかさだ。

しかし、世界のITの中心とも言えるシリコンバレーから、とってもスローなマイクロブルワリーという文化が育っていることが、嬉しい限りだ。

小さな町には小さなブルワリー

デトロイトのダウンタウンから、北に15㎞ほどのところにあるロイヤル・オーク市。
訪ねたのは、ROYAL OAK BREWING(ロイヤル・オーク・ブルーイング)。
ホールの片側がカウンターになっていて、その後ろに醸造タンクが並んでいる。
こんな小さな町にも、しっかりとしたブルワリー・ブルーパブがあるのが羨ましい。

基本的にはイギリスタイプの店だが、まず、ベルギータイプのウィートにトライ。これが「糠臭さ」が無く上出来だった。「ウィートをもう一杯」というよりは、次にエールやポーターへ行きたくなる。そんな味わいだった。

たまたま、開店十周年ということで、”10 YEAR CHEER”と命名されたエールを飲むことができた。なんと、アルコール度数10%のアンバーエールだった。味はエールの平均点。しかし、飲むほどに効いてくるのは確かだ。10度のエールは、さすがに初めてだったので、好い経験だった。

どの店も、何かしら楽しみながらビールを作っている。繰り返しになるが、羨ましい限り…
食べ物と飲み物だけは、絶対に米国には負けないと思ってきたのだが、地ビールだけはまったく追いつけない。「日の丸」「君が代」は嫌いだが、さすがに、頑張れ!ニッポンの地ビールと言いたくなる。

Burning River

20051019仕事で10日ほどアメリカに行ってきた。空港での非常にハードなセキュリティーチェックに辟易しながらも、各地でブルワリー・パブを訪ねることができたので、「極私的最新アメリカビール事情」といこう。

まずは、Burning River。川が燃えるとは?
別に、唐辛子入りの出来の悪い地ビールのことではない。
場所はクリーブランド。
グレートレイクブルーイングの素晴らしいペールエールだ。
グレートレイクブルーイングのブルーパブは、クリーブランドのマーケットアヴェニューというところにある(写真はマーケットアヴェニューにあるウエストサイドマーケット。グレートレイクブルーイングは、このすぐ近くにある)。

なぜ、Burning River?
クリーブランドは、グレートレイク=エリー湖に流れ込むカヤホガ川と、そこから延びる運河が物流を支えてきた町だ。20世紀に入ると製鉄と石油精製で栄えた。重工業からの廃油が、川を覆うという最悪の公害の時代があった。
1969年には、なんと川に火がついて大きな火災を引き起こしている。これがBurning Riverのいわれだ。その火災がキッカケとなって、公害防止につとめ、今は運河も大分きれいにはなっているが、クリーブランドの人々は反省を込めて、Burning Riverのエピソードを語り継いでいる。

さてビールだ。
Burning River Pale Aleは、メニューを見ると、 American Pale Aleのカテゴリーだと書かれている。ペールエールとしては色は濃いめで、ホップの苦みが心地良い。今回のアメリカ出張で飲んだビールの中で、間違いなくナンバーワンだ。
American Pale Aleという説明は、初めて見たが、他ではIndian Pale Aleと呼んでいるビールだと思う。
イギリスがインドを植民地としていた時代、長い船旅で腐らないように、思い切りホップを効かせた苦いビールを作った。これがIndian Pale Aleのルーツ。現在、イギリスではIndian Pale Aleを見かけることは少ないが、アメリカでは、マイクロブルワリーブームの中で、出来の良いIndian Pale Aleが作られてきた。

このブルーパブには、他にイギリス系ではポーター、ドイツ系でドルトムンターを含むラガー数種、さらにベルギー系のウィートビール(白ビール)もある。ポーターは色は真っ黒だが、味わいはダークエールといったところ。ドルトムンターは味わいの深いラガー。日本のラガーが水のように思えてしまう。
このグレートレイクブルーイング、いずれのビールも出来が良く、どれを飲んでもOK!
料理も良く、中でも記憶に残ったのは、オーガニック・マッシュルームのビザ。ゴルゴンゾーラチーズが効いていて、「目から鱗」の美味しさだった。

クリーブランドに行ったら、グレートレイクブルーイングを訪れる価値は絶対にある!
…と私は思う。アメリカではなかなか出会うこと無い、超お薦めだ。

マグロで死滅する日

【注意すべき魚などと、食べてよい回数】
(1回80グラムとした場合)
<2カ月に1回まで>バンドウイルカ
<2週間に1回まで>コビレゴンドウ
<週1回まで>キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ
<週2回まで>キダイ、クロムツ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ
*週に2種類、3種類を食べる場合は、それぞれの量を2分の1、3分の1などに減らす。

上記は、2005年8月12日に厚生労働省薬事・食品衛生審議会が発表した妊婦の魚摂食に関する注意事項だ。今のところ、大きな混乱は起きていないようだが、この発表にはいくつかの謎や落とし穴がある。

まず、80g/1回という基準。鮪の刺身6~8切れほどで80gだそうだ。居酒屋の鮪の刺身一人前といったところ。自宅の夕食にメバチマグロの刺身が並べば、ほぼ一人80gは食べてしまうだろう。発表に従えば、妊婦の場合、メバチマグロの刺身80gを食べた後、一週間は上記のリストに含まれる魚を一切食べてはいけないことになる。キンメダイの煮付けを一人一切れ食べた場合も同様だ。これは、かなり厳しい制限といえる。

さて、この注意事項は、妊婦向けに発表されているが、本当に一般の人にはまったく心配ないのだろうか?ちょっとした魚好きだったら「妊婦の許容量」の10倍~20倍食べているはずだ。私自身もそれに近い。このリストの中では「目眩まし」の役割を果たしているバンドウイルカやツチクジラも食べたことあるし…
学者の中には、魚を多く摂食する漁村などでは一般の人も注意を要するという意見もあるという。

次に、厚労省もどのメディアも「メチル水銀は自然界に存在する」とは言っているが、今回問題となっているメチル水銀が自然界起源のものかどうか明言していない。
水俣病の例を挙げるまでもなく、鉱工業によって人類が水銀を海に棄て続けてきたことは間違いのない事実だ。農薬による水銀汚染もある。普通に考えれば、海域によって水銀濃度はかなり変わるはずだが、その事には誰も一切触れていない。日本近海の本マグロと、マルタ島で養殖した本マグロでは、メチル水銀の濃度が違うと考える方が普通だと思われるのに…

アメリカの五大湖では、人類が排出した環境ホルモン(PCBまたはDDTらしい)が食物連鎖の頂点にあるハクトウワシを絶滅の危機に追い込んでいる。五大湖のPCBやDDTの濃度は、今までの「常識」では特に高いと判断される値ではないというのに…

水銀の問題も同じで、海中では微量な水銀が、食物連鎖で濃縮されていく。結局は、その食物連鎖の頂点にある肉食の魚類や鯨類が危ないということになる。ただ、ここで忘れてはいけないのは、その食物連鎖の頂点にいる生き物を私たちが食べているということだ。ハクトウワシを食べることはないが…【環境ホルモンと水銀では、人体に影響を及ぼすプロセスが違うが、ここでは詳細に触れない】

まずは、海域ごとの水銀濃度など、関連するすべての情報を厚労省は公開すべきだろう。また、過去に遡って、海水に含まれる水銀濃度の経時変化もどこかにデータがあるような気がする。こういったことを正直に追っていかないと、とんでもないことが起きそうだ。
もし、魚に含まれる水銀が、人類の健康に被害を及ぼすとしたら、真っ先に影響が出るのは間違いなく日本人だ。その時、「マグロで死滅する日」は冗談ではなくなる。

ミルクの香りの台湾茶

20050723これはお茶なのか… まず、茶葉の香りを嗅いでビックリ。
金萱茶系のお茶は、大体「バニラの香り」とか「ミルクの香り」とか銘打たれているが、今回のナイ香金萱(ナイシンジンシャンと読むらしい。ナイは女+乃)は格別だ。前にも何種類かの金萱茶を飲んだことがあるが、「まぁ、バニラと言えばバニラか」という程度だった。ナイ香金萱は飛び抜けて良い。念のために記すが、フレーバーティではない。

茶葉自体の香りは甘味が立っているが、実際に煎れてみると、青茶の苦みを甘い香りが包み込む… そんな感じになる。購入元は「リーフストア」。この店、オリジナルの茶缶も洒落てて良い。

しかし、日本茶にも紅茶にも絶対に有り得ない不思議な香りと味。中国茶の奥深さに、ズブズブとのめり込みそうだ。

Jasmine Pearl

20050721ジャスミン茶の中での優れものと言えば茉莉白龍珠。「モーリーバイロンジュ」と読むらしい。英語では「Jasmine Pearl」。美しい!

ジャスミン茶といえば、安物の緑茶に無理矢理ジャスミンの香りを吸わせたような印象があるが、茉莉白龍珠に関しては、まったくそれは当たらない。福建省でのみ作られる高級ジャスミン茶だ。
凍頂烏龍のように茶葉は小さくまとめられ、白茶を使っているので所々が白く見える。その様を真珠に例えている。

ここのところ、暑い日が続くので、茉莉白龍珠を冷茶にして楽しんでいる。
1リットルほどのガラス容器に大さじ一杯の茉莉白龍珠。そこに、100CCほどの熱湯を注ぐ。15秒もすると茶葉が開いてくるので、容器一杯まで冷水で満たす。3~4時間ほど冷蔵庫で冷やしてから茶葉を漉し取れば、実に上品なジャスミン冷茶ができあがる。

宝山蒸撰紅東酒精乃雫

20050710やっと、宝山蒸撰紅東酒精乃雫(通称「宝山紅東」)を口にした。
これは凄い!
34度なので五分五分の先割りを一昼夜前に作っておいて、オンザロックと飲み比べたが、五分五分でも芋の風味が薄れていない。逆にアルコールが強く当たらない分、先割りの方が旨い!口に含む前の香りだからアロマか… これが見事に来る。

それにしても、6:4の割は誰が決めたのだろう。確かに薩摩系の25度の芋焼酎を6:4にすれば15度になって、日本酒程度のアルコール度数になる。宮崎系の20度を6:4にすれば12度だから、これはワイン程度だ。食中酒としては日本酒やワインは実に良くできて、このアルコール度数は黄金律とでも言うべきものなのだろう。

さて、宝山紅東をどう割るか… 6:4では濃すぎるのは明白だ。「あまり薄くしすぎてももったいない」という貧乏根性がはたらいて、とりあえず五分五分で割ってみた。日本酒の原酒並の度数ということだ。次は4:6で試してみようか… 度数的にはOKだが、やはりちょっともったいないかな。

ぐわんばれ!日本茶

自分で中国茶にはまっていながら、日本茶のことが心配になってきた。と言っても、抹茶は庶民のものとは言いがたいし、番茶ではあまり論ずることもない。中国茶と比較するなら、文化的にも価格帯的にも煎茶だろう。

ところが、前に書いたとおり、日本の茶木は大半がヤブキタで占められており、味も香りも多様性がない。煎茶を飲んで「これは狭山だ」「いや静岡だ」「なんのなんの宇治に決まっている」なんて言い当てることは不可能に近い。一方、中国茶は少し飲み付ければ、凍頂や東方美人を外すことはない。「中国茶の方が大雑把で、日本の煎茶は繊細なんだ」と言ってしまえばそれまでだが、気候や地質などでお茶には本来多様性があるはずだ。それが感じられないのは寂しい。

器はどうだろう。煎茶は60℃~80℃で煎れるとされるが、そのためには湯冷ましが必要だ。また、急須ではなく宝瓶を使いたい。宝瓶に取っ手が付いていないのは、熱湯で煎茶を煎れないための知恵だと思う。また当然、湯飲み茶碗ではなく、小振りの汲出で頂いてこそ煎茶の味が分かる。汲出はぐい飲み程度の大きさがよい。
しかし、東日本ではデパートでさえ、宝瓶+湯冷まし+汲出という煎茶器揃いはあまり売っていない。陶磁器の種類で見れば、備前と萩がこの手の煎茶器揃いの主流で、他に常滑や有田で多少見ることができる程度だ(他はゼロという意味ではない)。
このように、器から見ても、真面目に煎茶に取り組む姿勢が感じられないのが現状だ。

備前と萩で煎茶器が充実しているのは偶然ではない。中国地方の山間部では、多くの家庭に煎茶器があり、男たちが客に煎茶を振る舞う姿によく出くわす。長年の農作業でゴツゴツした太い指先で、小さな宝瓶や汲出を扱い、見事なお茶を煎れてくれる。ここには豊かな煎茶の文化が残っていると感じたものだ。「絶対に焦らず、湯冷ましで十分に湯を冷ましてから煎れるのが唯一のコツだ」と教わった。しかし、こんな風景に関東で出くわすことは、まず無い。

ちなみに、私自身は萩の煎茶器揃いを使っている。久々に一保堂茶舗の煎茶(そんなに高くないもの)を買ってみた。80℃以下で煎れれば、確かに甘味が出て美味しい。しかし、艶やかさが無く、ちょっと寂しい。侘び寂だからしょうがないか…
産地表示が無いのはお店独特のブレンドだからなのだろうか…

いずれにしても、煎茶にもう少し頑張って欲しいと思う。

芋焼酎のイモ

芋焼酎の原料は、ほとんどがコガネセンガンと呼ばれる焼酎造り専用の甘藷(サツマイモ)だが、最近、食用の甘藷を使った焼酎が少しだが登場してきている。

まずは宮崎県日南市の京屋酒造が作る甕雫だ。陶製の容器の話題が先行して、超品薄の人気焼酎になっているが、焼酎としての完成度も高い。独特の甘味を感じさせながらスルッと飲める芋焼酎だ。焼き芋にすると美味しい紅東系の紅寿を原料にしている。宮崎焼酎らしくアルコール度数20度を守っているのも頑固で良い。

東京近郊在住なら、新宿宮崎館KONNEでの入手がお薦め。
ネット上では、不当なプレミアム価格を付けている店が多いので要注意。定価は1.8リットルが3,990円、0.9リットルが2,783円だ。

食用甘藷の芋焼酎でもう一つ注目は、富乃宝山や薩摩宝山の鹿児島・西酒造が造る宝山蒸撰紅東酒精乃雫(略して、宝山紅東)。文字通り、紅東を使っている。この宝山紅東も超品薄の芋焼酎だが、昨日、もらい物で頂き、やっと試すことができる。20050710

ちなみに、コガネセンガンは晩夏から冬にしか流通しないので、普通、春から夏にかけて芋焼酎の仕込みはできない。しかし、紅東などの食用甘藷は年中流通しているので、通年生産が可能になると言う。一方、原料コストは食用甘藷の方が高い。焼酎造りの細かいノウハウも違うので、技術が高く冒険心のある蔵しかコガネセンガン以外の甘藷に手を出していないのが現状らしい。

うるち米と言えばコシヒカリ、酒米と言えば山田錦、そして焼酎米と言えばコガネセンガン… 紅茶や中国茶には多種多様な茶木があるのに、日本茶はほとんどがヤブキタ茶という種類で作られている。ヨーロッパではワインを作るためのブドウの樹も多種多様だ。どうも、日本人は、少しばかり受けがよいと右へ習え!で、気候や風土、地域の歴史の多様性をポイッと捨ててしまう傾向が強い。
それに抗して進む、食用甘藷による芋焼酎造りに私は注目してみたいと思う。

和をもって… 先割りの話

芋焼酎をどう飲むか… かつてはお湯割りが当然だったが、ここ数年のブームの中で出てきている少しばかり上品な芋焼酎は、ロックや水割りなどでも楽しめる。
そこで、先割り。焼酎を飲む数日前に水で割っておくと美味しくなると言う。「ホントか?」と思っていたが、ホントだった。

芋にしても、米にしても、麦にしても、若干の油分を持っている。その植物起源の油分は蒸留酒である焼酎にも微量だが残るそうだ。そして、油分にしか融けない香りや味がある。これが水分やアルコールと馴染むまでには時間がかかる。宮崎県日南市の芋焼酎メーカーで聞いた話なので、間違いないだろう。

蔵での焼酎造りでは、蒸留仕立ての原酒(70度以上ある)に水を加えて焼酎にする。この作業を「和水(わすい)」と呼ぶ。「加水」でないのがなんとも嬉しい。どこの蔵でも「和水」に最低三週間の時間をかける。理由は上記の通り。「和」とは、こういう時にこそ使う言葉だと思う。

私が出会った蔵の社長は「先割りは理にかなっています。蔵で行う和水と同じですから」と語ってくれた。最低一昼夜、できれば一週間以上置くと、先割り焼酎は抜群に旨くなる。先割りもまた「和(=「なごみ」と読みたい)」を生む。

私は最近、6対4の先割り焼酎を冷蔵庫で冷やしておいて、氷を使わずに大きめの猪口で飲むスタイルにしている。これなら飲んでる途中に薄まることもない。ささやかな「和」の時である。

美人、東方より現る

20050629

最近、台湾の中国茶にはまっている。
凍頂烏龍茶や阿里山金萱包種茶といった王道も良いが、私が今、惹かれているのは「東方美人」。なんとも魅惑的な名前のお茶だ。

この「東方美人」、烏龍茶(青茶)の仲間だが、発酵度が高く紅茶に近い香りがする。
そして、もう一つ「東方美人」であるためには、栽培中の茶の新芽をウンカがかじらなくてはならない。「東方美人」には、ウンカが噛んだせいでできた思われる白い跡がたくさん付いている。
ウンカと言えば日本では稲の害虫として嫌われているが、茶ではウンカの分泌物質が美味の素となるらしい。
きっと、ウンカの大群に襲われた茶農家が「これじゃ、売り物にならねぇ!」とやけっぱちで飲んだお茶から始まったのだろう。

ウンカが活躍してこその「東方美人」。農薬の使用は極力抑えなくてはならない。すべての「東方美人」がオーガニックとは言い切れないが、無農薬の視点からこのお茶を評価し直す必要もありそう。

不思議な名前に惹かれて飲み始めた「東方美人」。奥が深そうだ。