柑橘系際立つ松江の酒

「豊の秋」は島根県松江の米田酒造のブランド。中でも純米吟醸は「花かんざし」と銘打ってます。
コロナ禍の少し前だったか… 新宿の居酒屋で出会って、「これはイケる!」と思った記憶が。

出入りの酒屋で、「花かんざし」発見!
“イケる”以外はよく覚えていなかったのですが、もう一度試そう!と。

スッキリした果実香と果実味。酸味が際立っているので柑橘系の印象があります。スダチとかカボスみたいな。
この写真では分かりにくいですが、色はかなり黄色味がかっています。おそらく濾過はしてないか…
今現在の私の好みとして少し甘かったですが、この酸味は久々に味わった爽やかさ!
上出来です。

百舌鳥という名の日本酒

最近は小洒落たラベルの日本酒が多い。特に余白を生かしたデザインが目立つようになった。
出会ったのは、上喜元の『百舌鳥』。

百舌鳥(モズ)というと小っちゃいくせに獰猛な肉食で、はやにえ(冬に向けて保存用に獲った蛙など)を木の枝に刺したまま忘れてしまうとか、個人的にはあまり好感は持っていなかったのですが…
はやにえ忘れは誤情報で、ちゃっと食べているそう。
そして、“百舌”の云われは、様々な鳥の鳴き声を見事に真似るから。なんのために真似ているのかは研究中とのこと。
鳥の鳴き声が言語であるというのは今や常識。島言葉から津軽弁まで流暢に使いこなす百舌鳥の言語体系はどうなっているのか(笑)。

で、お酒に戻ります。上喜元は山形県酒田酒造のブランド。どれを飲んでも美味しいですが、今回は初めて出会った百舌鳥の一升瓶に手を伸ばしました。
酒蔵の能書きとしては百舌鳥に引っ掛けて、「どんな飲み手にも、どんな料理にも」という間口の広さが売りのよう。流行のダイバーシティですか?と突っ込みたくなります(笑)。

間口の広さはイマイチ認識できませんでしたが、品の良い果実香+米の香り。出来の良い吟醸だと思いました。お手頃値段だし。
米の香りありだけど糠臭さは一切なし。そういう意味でも品が良い。個人的には少し甘かったかな…とも。
その吟醸香は、さすがラフランスとかブドウの産地。微妙に洋物果物の香りがきます。なかなかイイです。このお酒。

フィンランドビールを味わう

偶然、手に入ったフィンランドビール。
醸造会社は Laitila(ライティラ)と言います。
2001年以来、すべての製品を風力発電による電気で作っているそう。20年前から!北欧の環境意識の高さには頭が下がります。
瓶ビール派の私としては、缶なのが少し残念ですが…

ブランド名の Kukko は想像の通り「オンドリ」を指します。発音は「クッコ」。
英語の「カッカドゥードゥルドゥー」よりも日本語の「コケコッコー」に近い感じがして、思わずニンマリ(笑)。

そう言えば、以前に取材した鳥取の養鶏場の社長さんは、ニワトリたちを“コッコ”と呼んで愛でてました。採卵養鶏なのでメンドリで、平飼いでした。

で、フィンランドビールに戻ります。
向かって右は TUIMA。ドイツの黒ビールの一種ドッペルボック(Doppel Bock)というカテゴリーです。濃厚さが売りなので楽しみです。
中央の HELES はチェコのピルスナータイプ。ということは、日本の大手のラガービールに近そう。
左は世界中で大流行りのIPA(インディアン・ペールエール)。ホップを効かせて苦みが立っているはず。

…というわけで、降って湧いたフィンランドビールブーム。1本ずつ楽しんでみました。

オレンジ缶のIPA。
濃厚な味で、よく出会うシャープな苦みのIPAとは一線を画します。
ほどよい苦みに黒ビール系の甘味がかぶさる感じ。うっすらと酸味も。
色からして黒ビールに近い濃褐色でした。

ブルー缶のHELLES。
予想通りオーソドックスなピルスナーです。一頃よく見かけたデンマークのカールスバーグに近い軽さ。日本のラガーで言えばサッポロの赤星が近いか。昨今流行のキレより柔らかめな口当たりを追求している感じ。
ちなみにフィンランド語の“helles”は「軽い」。他に「光」という意味もあるそう。

ブラック缶のTUIMAは「厳しい」とか「荘厳」という意味のフィンランド語。ガツンとくるかと覚悟していたら、角の取れた完成度の高い濃いビールでした。
黒ビール系のドッペルボック(Doppel Bock)系と書きましたが、TUIMAに関しては濃褐色というのが適切。
果実香に加えて焙煎香があり、ほのかにコーヒーを感じました。口に含むと品の良い甘味が… アルコール度数が8.5%と高いので、チビチビ飲るビールですね。
ドッペルボック(Doppel Bock)は英語ではDouble Bock。ボックの中でも麦芽を多く使って醸造するそうです。
かつて修道士が造り、断食中の栄養補給のために飲んだと。「液体のパン」とも呼ばれていたとか。
愛称のTUIMAの「厳しい」「荘厳」は味わいを指すではなく、修道士の生き方を比喩しているかな… とも思いました。分かりませんが(笑)。

というワケで、束の間のフィンランドビールブームはとりあえず〆。
LaitilaのIPAとTUIMAは、出会ったらまた飲んでみたいビールです。