時々作りたくなるハンガリー風パプリカチキン。
ハンガリーには行ったことはない。
ロケでノルマンディーのエトルタに行ったことがある。モネの奇岩の絵で有名な場所。
エトルタはそこそこの観光地でホテルが高いので、泊まったのは隣のイポールという小さな村だった。
コーディネーターが見つけてきたのは、なんとオープンに向けて内装工事真っ只中の小さなホテル。海沿いで部屋から砂浜が見えた。宿泊客はロケチーム5名と工事関係者のみだ。
商売熱心で工事中にも関わらず夜はバーも開いていた。さっそく様子見に…
小柄だけどがっしりした体格の中年男が寄ってきて、「中国人か?日本人か?」と訊くので、「Je suis Japonais.(私は日本人だ)」と答えた。
学生時代にほんの少しだけフランス語をやったので、ほんの少しだけフランス語がしゃべれる。ほんの少しね(笑)。
これがいけなかった。相手は一気にフランス語でまくし立ててきた。サッパリ分からん(笑)。
日仏完全バイリンガルのコーディネーターにSOS。しかし、「かなり変なフランス語で何を言っているのかさっぱり分かりません」と。
私からは田舎のフランス人にしか見えない工事関係の中年男、「マジャール!マジャール!」と言いながら、なぜか自分の尻を叩いている。
「この人、自分はマジャール人だって言ってるんじゃないの?」と私が先に気がついた。そこからはコーディネーターが東欧系フランス語だという認識で対応してくれたので、話が通じるようになった。
かいつまんで言うと、「俺はマジャール人でモンゴロイドなんだぜ。子どもの頃は尻に青いアザがあったんだ。お前らとは兄弟だぜ!」「ハンガリーから出稼ぎでノルマンディーに来てるんだ。内装工事屋だぜ」みたいな話。盛り上がった!
マジャール人がモンゴロイド系であることは間違いないそうだ。その西進はモンゴル帝国よりも前で、いっときはフランスやイベリア半島にまで勢力を伸ばした。やがて押し返され、多くが現在のハンガリー地域で定住したと言われている。
この夜の出会いがあってから、ハンガリーとマジャール人に親近感を持つようになった。そして思いだしたようにパプリカチキンを作る。ハンガリー料理の代表格で現地ではパプリカ・シュチルケ(Paprikás csirke)と呼ぶ。
材料は、鶏もも肉、玉葱、ニンニク、バター、ローリエ、パプリカ(粉末)、パプリカ(生)に白ワイン、塩胡椒。付け合わせはジャガイモと人参。パスタでもよい。トッピングは本当はサワークリームだが、ウチでは水切りヨーグルトで代用。ディルを少しだけ振る。
コツは粉末のパプリカをふんだんに使うこと。2人前でスパイス小瓶の半分くらいはいきたい。
ヨーロッパに行く機会があったら今度はハンガリーへも… と思っている。コロナが明けないと身動きとれないが。