2021年 干支の料理はグラスフェッドビーフで作る『ハンギ』

世の中大混乱の2020年を引きづったまま2021年へ。
恒例の「MSLABの干支の料理」は丑年を迎えました。

生産時の環境負荷が高い牛肉は、このところ逆風にさらされています。
今後は牛肉の消費量が減っていくのか… 環境負荷の低い飼育法へ移行できるのか… 様々な議論があります。
とは言え、干支の料理ですから牛肉を使うしかありません(笑)。

素材として選んだのはニュージーランドのグラスフェッドビーフ。牧草だけで育てた牛です。
配合飼料を作るための環境負荷はゼロ。本来の餌を食べることでストレスの少ない牛が育ちます。

調理法はニュージーランドの先住民マオリから学びます。
ハンギ(Hangi)という伝統的な料理。地面に掘った穴に焼き石を敷き、その上に大きな葉っぱで包んだ肉や根菜を入れ、土を被せて数時間… というのが本来の調理法。
言ってみれば大地をオーブンとして使う蒸し焼き料理です。
さすがに庭に穴を掘って再現はできないのでスキレットを活用します。

ハンギ(マオリ風牛肉と野菜のロースト) Hangi: Maori style Roast Beef with Vegetables

簡単にレシピを紹介しましょう。
まず、牛肉塊に少量の塩を擦り込みます(重量比0.5%程度)。強火で熱したスキレットで牛肉に焼き目を付け、一度取り出し…
弱火にしてスキレットにキャベツを敷き詰めます。これで焦げ付きを防止し、蒸すための水分も供給できます。
キャベツの上に牛肉、ジャガイモ、サツマイモ、人参、南瓜、玉葱などを並べます。
その上を濡れ布巾で覆ったあと、蓋をして30分~40分弱火で蒸し焼き。
火を消したら、さらに30分~40分余熱で蒸します。

レシピだけ見るとウエルダンのローストビーフのように感じますが、なぜかホロホロした食感になって美味しいですよ!
語弊有り覚悟で言うと、ちょっとコーンビーフのような口当たりになります。
余計な脂がないグラスフェッドビーフが柔らかく仕上がり、牛肉そのものの味わいを伝えてきます。
味付けは、牛肉に擦り込んだ少量の塩だけですが、野菜は旨味たっぷりに仕上がり、調味料なしで楽しめます。
物足りなければ、多少塩を付けても良いし、マスタードやバーニャカウダ、ジャジキ(ギリシャ風ヨーグルトディップ)でも美味しいです。

無人島だったニュージーランドにマオリが渡ってきたのは約1000年前。ヨーロッパ人がやって来たのは17世紀です。
本格的にヨーロッパ人の移住が始まったは18世紀。イギリスのジェームズ・クックが上陸し、イギリス領だと勝手に宣言しました。
入植者と先住民の衝突、マオリの部族間抗争、ヨーロッパからもたらされた伝染病など不幸な歴史がありました。
羊や牛がニュージーランドに入ってきたのも、この頃でしょう。それ以前に、マオリの食文化として野生動物の肉を使ったハンギがあったのかどうか… 今となっては知る由もありません。

イギリスの植民地となったニュージーランド。1864年にマオリに選挙権が認められてますので、アメリカやオーストラリアとは異なる植民地史をたどります(ちなみに、アメリカでネイティブアメリカンに市民権が与えられたのは1924年、オーストラリアでアボリジナルピープルに選挙権が認められたのは1967年)。

今のニュージーランドを見ると、ヨーロッパ系の人々が先住民に敬意を払って暮らしていることが見て取れます(すべてが平等になっているとは言えないのでしょうけど)。
コロナ対策で一躍世界をリードしたアーダーン首相。その内閣の外相はマオリのナナイア・マフタ氏です。ラグビーニュージーランド代表・オールブラックスが国際試合前に踊るハカはマオリ戦士の舞踏をルーツとするのはご存じの通りです。

ニュージーランド産グラスフェッドビーフのハンギ。そのキーワードは“敬意”ですね。
『大地に敬意を払う』
『先住民とその文化に敬意を払う』
『伝統的な調理法に敬意を払う』
そんな思いを抱きながら2021年を迎えました。

● 動画(約2分)
https://youtu.be/t58MhHJ_gks

附記:
スキレットを使ったハンギは牛以外の肉でも美味しく作れます。鶏や豚の場合は、ローズマリーとニンニクを加えるのがお薦め。 蒸し焼きの際に肉の上に乗せるだけでOKです。

● MSLABの干支の料理(バックナンバー)
https://www.mslab.com/eto/menulist.html

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