最近、玉緑茶(たまりょくちゃ)というのをよく飲んでいます。「ぐり茶」と呼ばれることもあります。
製法は、途中までは煎茶と同じですが、精揉(茶葉の形を細長くまっすぐに整える)工程がないので、茶葉が丸いぐりっとした形をしています。味は、「煎茶と変わらない」という意見と、「煎茶よりも渋みが少なく、まろやか」という意見がありますが、煎茶も千差万別なので、私は前者を支持します。
形が、言ってみればテキトーなので(笑)、煎茶よりも気楽に飲める感じ。そして、「やぶきた」以外のマイナーな品種を使っていることが多いのも嬉しいです。写真の「さやまみどり」もその一つで、柔らかい香りがあって、安らぎます。
玉緑茶の産地は九州が多く、中でも嬉野が最大と言われています。
一方、玉緑茶を飲んでいると、「煎茶は、なぜ棒状にするのか?」という疑問が湧いてきます。「味も香りも大きく変わらないのに、なぜ、面倒な精揉をするようになったのか?」ということ。どのお茶屋さんのサイトを見ても、その答えを見つけることができませんでした。
どなたかご存じ方がいらしたら、教えてください。
…と、ここまでが、「玉緑茶考」。
実は、最近、私が日本茶を買っているのは、フランス人が経営するお茶屋さんです。「なぜ、そんな捻れたことをしているのか」とお思いの方も多いと思いますが、理由があります。
この人、フローラン・ヴェーグさんは、13年前から日本在住。「日本茶インストラクター」の資格を持っていて、まぁ、日本茶にはまったフランス人。それが高じて、日本茶をヨーロッパに輸出するために、オンラインでビジネスを始めたようです(ヨーロッパ、特にドイツやフランスで日本茶の人気が高まっています)。ところが、そこに私のような日本人が集まり始めました。それは、農薬問題が大きな理由でした。
EUと日本では、お茶の残留農薬に対する基準が、大きく異なります。ヨーロッパに輸出できるのは、有機栽培・無農薬栽培・かなりの減農薬栽培をした日本茶だけなのです。
農水省のサイトに「諸外国における残留農薬基準値に関する情報」というのがありますので、“茶”のところを開いてみてください。仰け反ります!日本は間違いなく農薬大国です。もちろん、お茶だけの話ではありませんが。
もうひとつ、ヴェーグさんからお茶を買う理由は、“多様性”をとても大切にしてくれるからです。まず品種。現在、日本で栽培されている茶の75%は「やぶきた」が占めていますが、ヴェーグさんは、マイナーな品種を積極的に評価しています。また製法では、今回の玉緑茶もそうですが、釜炒り茶もあり、さらには碁石茶、バタバタ茶などというかなり珍しい日本茶にも注目しています。
というわけで、「日本茶にはまったフランス人が、輸出向けに揃えた安全な日本茶を日本で買う」という捻れた状況は、しばらく続きそうです。
しかし、日本の農薬は、なんとかしてほしいものです。
ヴェーグさんのオンラインショップ
青鶴茶舗-Thés du Japon
最近、谷中に実店舗を開きました。まだ、訪れていませんが。