最近入手した錫の上燗徳利。錫の酒器というとチロリが浮かびますが、珍しく典型的な徳利型。大阪錫器の製品です。新品では2万円以上しますが、骨董市で1/10以下の値段で入手。おそらく、骨董屋主人の目利き違いでしょう(笑)。ずっと欲しかった道具なので大ヒット!
日本酒の燗には、熱燗=50度前後、上燗=45度前後、ぬる燗=40度前後、人肌燗=37度前後、日向燗=33度前後などがありますが、もちろん、45度前後の燗付け専用ではありません。私の場合は、ほぼぬる燗か人肌燗です。
上燗という言葉には「ちょうどいい加減の燗」という意味もあって、要するに「美味しい燗」。
そう言えば、時々立ち寄る、新宿三丁目のおでん屋は『上燗屋 富久』。この店には、おそらく4合以上入ると思われる大きな上燗徳利があります。それを使って、主がみずから燗を付け、蛇の目のぐい呑みに注いでくれます。店名と上燗徳利に関係があるのかどうかは分かりませんが。
で、なぜ錫の徳利がよいのか… とにかく燗の付きが速いのです。これは熱伝導率の良さによります。陶器の徳利だと、なかなか温まらなくて、気がついたら、アッチッチ!なんてなりがちですが、錫の場合は30秒もあればぬる燗程度になります。もちろんお湯の温度によりますが。
家庭で燗酒が広まらない理由のひとつは、燗付けの面倒さ、難しさにあると思いますが、錫の酒器は、その問題をかなり解決してくれます。
慣れてくると、徳利の首や肩の部分を触っただけで、燗の付き具合が分かるように。徳利を通して日本酒と会話する。そんな趣です。
徳利(錫でも陶器でも磁器でも)で燗を付けると、どうしても上の方の温度が高くなります。これは、2つの徳利を使って酒を行ったり来たりさせることで解消します。大きめの徳利を使えば、軽く揺するように廻してあげるだけでも、温度は平均化します。
今や日本酒の飲み方と言えば、冷やが圧倒的な主流ですが、常温やぬる燗でこそ、味わいのある酒も、たくさんあります。上燗徳利を携えて、今宵も、あらたな旅に出ることにしますか(笑)。