たかがシジミ、されどシジミ

シジミは、肝臓に欠かせないタウリンを豊富に含んでいるので、「一杯飲った後のシジミの味噌汁」は、おまじない以上の効き目があるようだ。

さて、日本には三種類のシジミが生息しているが、主役はヤマトシジミ。それも島根県の宍道湖産が国内水揚げの45%を占めている。他の産地も宍道湖から稚貝を買って放流しているところが多いので、宍道湖がヤマトシジミの王様であることは間違いない。

しかし、数年前、宍道湖のシジミは風前の灯火になっていた。「宍道湖・中海の淡水化・干拓計画」が進んでいたからだ。ヤマトシジミは汽水湖でしか繁殖できないので、淡水化が実行されていれば、間違いなく死滅していた。
1963年に始まった淡水化・干拓計画が最終的に中止されたのは2002年のこと。元々、大規模水田開発のための事業だったが、途中で農政は減反一本やりに転じた。二束三文だったシジミは、他の産地が干拓や水質の悪化で水揚げを落とす中、宍道湖産の値が上がった。時代の流れ、政治の流れに翻弄され、淡水化・干拓計画は中止された。そして宍道湖のシジミは生き残った。

さて、せっかくだからシジミを美味しく食べるコツ。宍道湖のシジミ漁師から聞いた話だ。少なくとも、筆者はシジミの砂抜きの方法を完全に誤っていた。
まず大切なことは、海水の1/3程度の塩分の塩水で砂抜きをすること。淡水では味が抜けてしまう。そして、シジミをその塩水に沈めないこと。少し顔を出しているくらいが良いそうだ。
<a href=”http://www.saiko.gr.jp/sijimi/waza.html”>【シジミの砂抜き(詳細)】</a>
あと、目から鱗の話は、シジミは冷凍が効くということ。地元の漁師も、一番美味しい季節に砂ヌキだけして小分けして冷凍するそうだ。食べる時は、凍ったまま水に入れて、普通に味噌汁にすればよい。当然、殻は開く。
問題は、その「一番美味しい季節」。宍道湖のシジミ通たちに言わせると「卵を孕んだ5月が一番」というのと「卵を産んだ後の7月が一番」と二説が対立する。

たかがシジミ、されどシジミ。これは試してみるしかない!