古代ビール!ではない

京大と早大が共同で、古代エジプト小麦を使ったオリジナルビールを出すそうだ。
「一度飲んでみたい!」と思わせるあたり、相変わらず吉村作治先生は商売が上手だ。京大の方も、国立大学の独立行政法人化でいろいろと手を出してみたいのだろうけど…

しかしこの記事、良く読んでみると、古代ビールに使われていたエンマー小麦を使うのは来年からで、特に古代ビールの味や風味を再現することを目指したとも書いていない。まぁ、味がどうだったのかは分かりはしないのだが… おそらく、小麦を使ったドイツの白ビール=ヴァイツェンの傾向なのだろう。
仮にエンマー小麦を使って、現代にうける白ビールを作っても、何も偉くないよなぁ~ せっかく研究の副産物として発表するなら、「古代エジプト人は、こんなビールを飲んでいたんだ!」とビックリさせるくらいのものを作って欲しい(「嘘でも」とは言わないが)。大学が、単に商売じゃ悲しすぎる。

さて、技術協力は黄桜酒造。ビールには結構真面目に取り組んでいて、自ら地ビールを醸造している。
しかし、40代後半以上の酒飲みにとっては、どうしても「カッパッパ、ルンパッパ」の黄桜。黄桜とか月桂冠とかは、イコール三増酒(醸造用アルコールや糖類等を加えて三倍に薄めた日本酒)のイメージがいまだに抜けきらない。可哀想な気もするが、頑張って欲しいとも… 先生方を焚きつけて、本気で古代ビールを想像させるものに仕上げて欲しいものだ。

アイラ島が生むアイラ党

20060415シングルモルトファンには笑われてしまう程度の知識しか無いのだが、密かにアイラ・モルトを飲み続けている。

スコットランド、グラスゴーの西にあるアイラ島がアイラ・モルトのふるさとだ。6~7年前に仕事でスコットランドに行った際に、地元の人(と言ってもロンドン在住)から「スモーキーなのが好きだったら、ラガヴァリンが良いよ」と薦められたのが、アイラ・モルトとの出会いだった。
ラガヴァリン(ラガブリンとも記す)は、最近大人気になっているアイラ・モルトの代表選手。ラガヴァリンに限らず、アイラ・モルトの特徴は強烈な燻蒸香だ。あと、ヨードの香りもするそうだが、残念ながら私の鼻では明確に分からない。

スコットランドでラガヴァリンに出会って以来、口にするウイスキーの8割方はアイラ・モルトに… いつの間にか、すっかりアイラ党になってしまった(笑)。

最もバランスが良いのは、やはりラガヴァリンだが、最近、人気になりすぎてプレミアム価格になっているのが癪だ。そこで、いろいろと浮気をしている。何の役に立つか分からないが、一応、個人的評価一覧を…

■アードベック(ARDBEG): 強烈な燻蒸香。バランスが今一では…
■ラフロイグ(LAPHROAIG): アイラの中では温和しい感じ。
■ボウモア(BOWMORE): サントリーが輸入しているので、国内では最も入手しやすい。入門版という感じ。
■ラガヴァリン(LAGAVULIN): 最初に出会ったせいもあるのだろうが、個人的にはアイラ・モルトのナンバー・ワン。強めの燻蒸香が「飲む緊張感」を与える。
■カリラ(CAOL ILA): 最近初めて飲んだが、言われているように「磯の香り」「潮の香り」があり、塩味さえ感じる。全体的なバランスはラガヴァリンに近く、結構好き!というのが個人的感想。

もちろん、熟成年数などによって味わいが違うのは分かっているが、大雑把には、上記のような感じを得ている。

別格!宍道湖のシジミ

やはり宍道湖のシジミは別格だった。小さなアサリ程度の大きさがある。東京では、料理屋で出されるシジミの味噌汁の身をほじって食べ良いものかどうか迷うことがある。あまりに小さくて、それに執着するのがケチに思えてしまうからだ。

しかし、宍道湖のシジミにはそんな心配は無用だった。しっかりと「食べてくれ!」と主張している。届いた晩は、さっそくシジミ三昧!といっても二種類しか作らなかったからシジミニ昧!?

まずは、ニンニクと鷹の爪、日本酒を使って酒蒸しにした。作り方は簡単で、鍋にニンニク・鷹の爪・シジミを入れ、日本酒をヒタヒタの半分くらい。火にかけて醤油を少々加える。
沸騰してくると次々に殻が開く。アクも出るので、これは引く。全部の殻が開いたら、シジミだけ取り出し、残った汁に同量程度の昆布だしを加え、一煮立ち。汁をシジミにかけて、細葱でも散らせば料亭でも出せそうな『シジミの酒蒸し』の完成だ。
ニンニクも鷹の爪も主要な成分は油にしか溶けないので、逆に油を使わないことで、味のバランスが良くなったようだ。シジミの香りが消えることなく生きたと思う。

仕上げはシジミの味噌汁にしたが、これはレシピ省略。
シジミが効いて、肝臓が良くなりすぎると困るので、いつもより一合余計に飲んでしまった(笑)。

一つ特記しておきたいのは、二つの料理で使ったシジミの殻がすべて開いたということ。スーパーで買ったシジミでは、こうはいかない。

たかがシジミ、されどシジミ

シジミは、肝臓に欠かせないタウリンを豊富に含んでいるので、「一杯飲った後のシジミの味噌汁」は、おまじない以上の効き目があるようだ。

さて、日本には三種類のシジミが生息しているが、主役はヤマトシジミ。それも島根県の宍道湖産が国内水揚げの45%を占めている。他の産地も宍道湖から稚貝を買って放流しているところが多いので、宍道湖がヤマトシジミの王様であることは間違いない。

しかし、数年前、宍道湖のシジミは風前の灯火になっていた。「宍道湖・中海の淡水化・干拓計画」が進んでいたからだ。ヤマトシジミは汽水湖でしか繁殖できないので、淡水化が実行されていれば、間違いなく死滅していた。
1963年に始まった淡水化・干拓計画が最終的に中止されたのは2002年のこと。元々、大規模水田開発のための事業だったが、途中で農政は減反一本やりに転じた。二束三文だったシジミは、他の産地が干拓や水質の悪化で水揚げを落とす中、宍道湖産の値が上がった。時代の流れ、政治の流れに翻弄され、淡水化・干拓計画は中止された。そして宍道湖のシジミは生き残った。

さて、せっかくだからシジミを美味しく食べるコツ。宍道湖のシジミ漁師から聞いた話だ。少なくとも、筆者はシジミの砂抜きの方法を完全に誤っていた。
まず大切なことは、海水の1/3程度の塩分の塩水で砂抜きをすること。淡水では味が抜けてしまう。そして、シジミをその塩水に沈めないこと。少し顔を出しているくらいが良いそうだ。
<a href=”http://www.saiko.gr.jp/sijimi/waza.html”>【シジミの砂抜き(詳細)】</a>
あと、目から鱗の話は、シジミは冷凍が効くということ。地元の漁師も、一番美味しい季節に砂ヌキだけして小分けして冷凍するそうだ。食べる時は、凍ったまま水に入れて、普通に味噌汁にすればよい。当然、殻は開く。
問題は、その「一番美味しい季節」。宍道湖のシジミ通たちに言わせると「卵を孕んだ5月が一番」というのと「卵を産んだ後の7月が一番」と二説が対立する。

たかがシジミ、されどシジミ。これは試してみるしかない!

ナウサの赤

久々にギリシャワインを飲んだ。ギリシャ北部のナウサという町の名前が、そのままワインの名前になっている。「ナウサ」はギリシャを代表する赤ワイン。この地方にだけ古くから伝わるキシノマブロ(Xinomavro:クシノマブロとも記す)という葡萄種で作る。
今回入手したのは、ナウサにあるギリシャ最大のワインメーカー=ブターリ社のものだ。

数年前、仕事でギリシャ全土を回ったことがあるのだが、その時にもっとも記憶に残ったワインが「ナウサの赤」だった。ブターリ社のワイン貯蔵庫にも入り、ズラリと並んだ木の樽に圧倒されたのを覚えている。

地元の人たちは「ナウサこそがヨーロッパワインのルーツだ!」と語る。そりゃ、ヨーロッパ文明がギリシャから始まっているのだから、そういうことも言えるかも… ギリシャでは、紀元前4世紀に今日のAOC(原産地呼称統制法)に近いワイン法が制定されたという記録もあるそうだ。紀元前4世紀といえば、アレクサンドロス大王とその父・フィリッポス2世の時代。ナウサのあるギリシャ北部・マケドニア地方は、アレクサンドロス大王の故郷でもある。

ちなみに、古代マケドニアの首都・アイガイは現在のヴェルギナという町にあったという説が有力。ヴェルギナの考古学博物館では、フィリッポス2世の遺骨が入ったまま発見された黄金の小箱や黄金の冠など、マケドニアの繁栄を今に伝える宝物を見ることができる。ナウサからヴェルギナまでは車で30分ほどだったと思う(正確なデータではない)。
アレクサンドロス大王やフィリッポス2世もキシノマブロワインを飲んだのか。それは定かではないが…

さて、今回のナウサの赤。とにかく葡萄そのものの味と香りが伝わってくる。ドライな味わいで、苦味・甘味・酸味のバランスも程良い。香りも高く、全体としての完成度はかなりだと思う。スペインのリオハに似たところもある。

ただ、現地で飲んだ時は「ブターリのは軽い」という印象を得た覚えがある。中小メーカーのもので、もっとヘヴィーなナウサの赤があった。地元では「ナウサの赤は重い」という評価が主だったと記憶しているので、他のメーカーのものも今度試してみよう。
ついこの間までは、日本ではブターリのものしか買えなかったのだが、ネットで見るといつの間にか数社の「ナウサの赤」が入ってきている。