ぐわんばれ!日本茶

自分で中国茶にはまっていながら、日本茶のことが心配になってきた。と言っても、抹茶は庶民のものとは言いがたいし、番茶ではあまり論ずることもない。中国茶と比較するなら、文化的にも価格帯的にも煎茶だろう。

ところが、前に書いたとおり、日本の茶木は大半がヤブキタで占められており、味も香りも多様性がない。煎茶を飲んで「これは狭山だ」「いや静岡だ」「なんのなんの宇治に決まっている」なんて言い当てることは不可能に近い。一方、中国茶は少し飲み付ければ、凍頂や東方美人を外すことはない。「中国茶の方が大雑把で、日本の煎茶は繊細なんだ」と言ってしまえばそれまでだが、気候や地質などでお茶には本来多様性があるはずだ。それが感じられないのは寂しい。

器はどうだろう。煎茶は60℃~80℃で煎れるとされるが、そのためには湯冷ましが必要だ。また、急須ではなく宝瓶を使いたい。宝瓶に取っ手が付いていないのは、熱湯で煎茶を煎れないための知恵だと思う。また当然、湯飲み茶碗ではなく、小振りの汲出で頂いてこそ煎茶の味が分かる。汲出はぐい飲み程度の大きさがよい。
しかし、東日本ではデパートでさえ、宝瓶+湯冷まし+汲出という煎茶器揃いはあまり売っていない。陶磁器の種類で見れば、備前と萩がこの手の煎茶器揃いの主流で、他に常滑や有田で多少見ることができる程度だ(他はゼロという意味ではない)。
このように、器から見ても、真面目に煎茶に取り組む姿勢が感じられないのが現状だ。

備前と萩で煎茶器が充実しているのは偶然ではない。中国地方の山間部では、多くの家庭に煎茶器があり、男たちが客に煎茶を振る舞う姿によく出くわす。長年の農作業でゴツゴツした太い指先で、小さな宝瓶や汲出を扱い、見事なお茶を煎れてくれる。ここには豊かな煎茶の文化が残っていると感じたものだ。「絶対に焦らず、湯冷ましで十分に湯を冷ましてから煎れるのが唯一のコツだ」と教わった。しかし、こんな風景に関東で出くわすことは、まず無い。

ちなみに、私自身は萩の煎茶器揃いを使っている。久々に一保堂茶舗の煎茶(そんなに高くないもの)を買ってみた。80℃以下で煎れれば、確かに甘味が出て美味しい。しかし、艶やかさが無く、ちょっと寂しい。侘び寂だからしょうがないか…
産地表示が無いのはお店独特のブレンドだからなのだろうか…

いずれにしても、煎茶にもう少し頑張って欲しいと思う。

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