芋焼酎の原料は、ほとんどがコガネセンガンと呼ばれる焼酎造り専用の甘藷(サツマイモ)だが、最近、食用の甘藷を使った焼酎が少しだが登場してきている。
まずは宮崎県日南市の京屋酒造が作る甕雫だ。陶製の容器の話題が先行して、超品薄の人気焼酎になっているが、焼酎としての完成度も高い。独特の甘味を感じさせながらスルッと飲める芋焼酎だ。焼き芋にすると美味しい紅東系の紅寿を原料にしている。宮崎焼酎らしくアルコール度数20度を守っているのも頑固で良い。
東京近郊在住なら、新宿宮崎館KONNEでの入手がお薦め。
ネット上では、不当なプレミアム価格を付けている店が多いので要注意。定価は1.8リットルが3,990円、0.9リットルが2,783円だ。
食用甘藷の芋焼酎でもう一つ注目は、富乃宝山や薩摩宝山の鹿児島・西酒造が造る宝山蒸撰紅東酒精乃雫(略して、宝山紅東)。文字通り、紅東を使っている。この宝山紅東も超品薄の芋焼酎だが、昨日、もらい物で頂き、やっと試すことができる。
ちなみに、コガネセンガンは晩夏から冬にしか流通しないので、普通、春から夏にかけて芋焼酎の仕込みはできない。しかし、紅東などの食用甘藷は年中流通しているので、通年生産が可能になると言う。一方、原料コストは食用甘藷の方が高い。焼酎造りの細かいノウハウも違うので、技術が高く冒険心のある蔵しかコガネセンガン以外の甘藷に手を出していないのが現状らしい。
うるち米と言えばコシヒカリ、酒米と言えば山田錦、そして焼酎米と言えばコガネセンガン… 紅茶や中国茶には多種多様な茶木があるのに、日本茶はほとんどがヤブキタ茶という種類で作られている。ヨーロッパではワインを作るためのブドウの樹も多種多様だ。どうも、日本人は、少しばかり受けがよいと右へ習え!で、気候や風土、地域の歴史の多様性をポイッと捨ててしまう傾向が強い。
それに抗して進む、食用甘藷による芋焼酎造りに私は注目してみたいと思う。