『桜の園』ケラリーノサンドロヴィッチ演出

世田谷パブリックシアターで、ケラリーノサンドロヴィッチ演出『桜の園』、観てきました。

言わずと知れた、チェーホフの大傑作!
天海祐希、荒川良々、緒川たまき、大原櫻子、井上芳雄、浅野和之… 豪華キャストです。

チェーホフ自身が「喜劇」だと言うのに、その初演を演出したスタニスラフスキーは、「これは圧倒的に悲劇だ」 と言い張った。でもこれって二律背反ではない。悲しい中に笑いがある。笑いの中に悲しさがある。ケラさんは、そこのところを見事に引きだしています。スタニスラフスキーが、どう「圧倒的に悲劇」として演出したのかには興味がありますが。
ともあれ… 私には、チェーホフとスタニスラフスキーの認識の違いはギャグとしか思えませんでした(笑)。

お洒落な舞台もケラ演出ならでは。場面転換まで含めてお見事でした。
天海祐希演じるラネーフスカヤは、「桜の園」と呼ばれる屋敷の女主人。没落貴族だ。
ロバーヒンは荒川良々。「桜の園」の元農奴で、商人として成功している。
ラネーフスカヤの娘アーニャを大原櫻子が演じ、その家庭教師シャルロッタが緒川たまき。アーニャと恋仲に陥る万年大学生トロフィーモフを井上芳雄が演じる。
屋敷の執事フィールスは浅野和之。小間使いドゥニャーシャが池谷のぶえ。
浮世離れしているからこその美しさ。天海ラネーフスカヤ。惚れ惚れするほどでした。
荒川ロバーヒンは、ストーリーが進むにつれて、だんだん舞台上で大きく見えるように。凄い俳優だとあらためて再認識。
緒川たまきは、ズッと不思議な空気感を持つ女優だなと思っていました。緒川シャルロッタの美しい身のこなし。目に焼き付いています。
わが愛する怪優、池谷のぶえは、またやらかしてくれました! パンフレットでは、「私が演じるからこその造形」と語ってます。完全達成! あとにも先にも絶対にあり得ないドゥニャーシャがいました(笑)。そして、笑いを取る核ではあるのだが、池谷ドゥニャーシャは、なぜか悲しい。
浅野フィールスも笑いを取るだけではない。屋敷に棲みつく霊魂みたいなものです。耳が遠そうだけど、実は全部見ていて、全部聞いている。あの有名なラストシーンを見事に演じきった浅野和之に拍手! です。

1903年に書き上げられ、1904年1月に初演。時まさに、第1次ロシア革命前夜。チェーホフは、かりそめの成功者ロバーヒンに、そして、新たな時代へと歩み出すアーニャとトロフィーモフに何を託したのだろう… そして、滅びゆくものを体現するラネーフスカヤは、圧倒的に美しい。

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