『落語家の業』快楽亭ブラックに塡る

★この記事は、かなりのネタバレを含みます。予備知識なしでドキュメンタリー映画『落語家の業』をご覧になりたい方は、最後の2行だけをお読みください(笑)。


快楽亭ブラック。顔と名前だけは知っていたが、詳しいことは知らず。そもそも落語に詳しくない私だが…
『落語家の業』は、立川談志の弟子、快楽亭ブラックの生き様を約6年半にわたって追いかけたドキュメンタリー。
この人は破天荒だ!

★は‐てんこう 【破天荒】 ‥ (「天荒」は天地未開の時の混沌たるさまで、これを破りひらく意)今まで誰もしなかったことをすること。未曽有。前代未聞。「―の大事業」-広辞苑 第七版-

借金、ギャンブル、女性問題、そして過激すぎる下ネタ。タブーなんて知っちゃこっちゃねぇ!コンプライアンスなんか関係ねぇ! すべてを洒落ちまおう! すべてを笑い飛ばそう!
「落語は人間の業の肯定である」。師匠立川談志の言葉だ。快楽亭ブラックは、生き方で、芸で、“業の肯定”を120%貫いている。
談志だって生き方としては、「業の肯定100%」まではいってない。なにしろ国会議員にもなっちゃったんだから(笑)。
繰り返しになるが、快楽亭ブラックの生き方は凄い。

映画としてはどうか…
なにしろ出演者が破天荒なので、構成だけはキチッと …と榎園監督が思ったのかどうかは知らないが、きれいに起承転結が出来ていて、安心してブラック師匠の破天荒さを満喫し、感動することができた。

●起:
日米ハーフで、“あいのこ”と虐められた少年時代から立川談志門下で落語家に。師匠の金を競馬に注ぎ込んで破門など、数々の過激なエピソードが積み重ねられる。
この段階では、「ちょっと変わった落語家の人物伝」みたいな感じ。
●承:
笑えはするが、フツーの人物ドキュメンタリーかな…なんて思っていたら大違い(笑)。
2014年、経営が行き詰まった名古屋・大須演芸場閉鎖時に、ブラック師匠、裁判所の強制執行官が来るギリギリまで舞台に座り続けた。カメラがよく撮っていて、満員の観客に大拍手で迎えられた執行官の顔は忘れられない(笑)。
注:『大須演芸場』は、現在一般社団法人となって再開しています。
●転:
過激すぎる下ネタが禍して、弟子から裁判で訴えられてしまう。
裁判もまた洒落で切り抜けようとするが、そうはいかずに敗訴。しかし、競馬で大勝負に出て… これがブラック流だ!
●結:
何があってもすべてを笑い飛ばして生きる「最後の芸人」、快楽亭ブラックの心意気は死なず。…という感じ。

榎園監督が、快楽亭ブラックを撮り始めたのは2019年。それ以前の過去映像は2人の協力者から得たようだ。カメラは荒っぽい。素人撮影か…と思える部分も多々。
ナレーションは、活動弁士の坂本頼光が担当。なかなかイイのだが…
ドキュメンタリー映画なので、本当は、ナレーションを使わずに(あるいは、最小限にして)、関係者のインタビュー音声などで紡ぎたいところ。同時録音の音が悪いところが多く、そうもいかなかったようだ。

ああ、もっと破天荒に生きたかった!もう遅いけど(笑)…なんて気分になれる映画。
快楽亭ブラックの破天荒ワールドに、浸かってみたい方にはお薦めです。 


快楽亭ブラックYouTube-mslab版プレイリスト