『サムシング・エクストラ!』にホンモノの喜怒哀楽を見た

年末にイイ映画を1本観ました。
『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』。
邦題はちょっと長いけど、フランス映画で、原題は『Un p'tit truc en plus』、英語では『A Little Something Extra』。どちらも直訳すると、「ちょっとした余計なもの」という意味だそう。
フランスでは、2024年に公開され、観客動員数1000万人超。フランス人の7人に1人以上が観た計算になる。ちなみに、『国宝』の12月30日時点の観客動員数は1209万人(日本人の1割)。『サムシング・エクストラ!』が、いかに大ヒットしたのかが分かる。
宝石泥棒の2人(父と息子)が逃亡中に、障がい者施設のサマーキャンプに紛れ込んでしまう。
障がい者たち、支援員たち、そして泥棒親子が繰り広げる大混乱。しかし、そのひとつひとつが心温まるエピソードになっていく。全体を見事に紡いで傑作映画が生まれた。
障がい者は、何かが「欠けている」のではない。彼らは、「キラリと光る個性」を少しばかり余計にもっているのだ。
「人生を豊かにしてくれるプラスアルファ」。それが、タイトル『Un p'tit truc en plus(ちょっとした余計なもの)』に込められている。
さらに、21番染色体が1本多いダウン症に愛を込めて引っ掛けている。深~くて、優しくて、茶目っ気のあるタイトルなのだ。
監督はアルチュス。フランスでは有名なコメディアンだ。本作では、監督を務めながら、宝石泥棒の1人(息子)を演じている。
出演する障がい者たちは、全員、素人。本物の障がい者だ(ダウン症だけではなく、様々な障がいの人がいる)。
オーディションで募集し、シナリオは一人一人に合わせて書き直したという。自らが自らを演じる世界だ。
もちろん、サマーキャンプは映画のために作られたフィクションだが、その中に入り込んだ障がい者たちは、サマーキャンプを本気で楽しんでいるように見えた。
ドキュフィクションの手法と言える。実名が役名になっているのも同じ狙いからだ。
一人一人に当て書きしたシナリオと言えども、撮影現場は、ハプニングの連続だったらしい。
そりゃそうだ! 皆、本気でサマーキャンプを楽しんでるのですから(笑)。
アルチュスは撮影監督に言ったという。「何があっても構えて、撮るんだ。正式な撮影中じゃなくてもいい。現れた瞬間を逃さずキャッチしてくれ」と。
他意や忖度によって、私たちの喜怒哀楽は抑制されている。しかし、障がい者たちは、忖度することも、他意や悪意を持つことも少ないという。
増幅された喜怒哀楽。それが愛おしい。いや、「増幅された」のではない。「これが本来の喜怒哀楽の表現なのだ!」と、映画を観ながら何度か思った。
最後は感動的なハッピーエンドで〆る。ハッピーエンド嫌いのひねくれ者の私だが、この映画だけは認めざるを得ない。不覚にも少しウルっとしてしまった。

