ロバート・レッドフォード追悼②『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜 (All Is Lost)』
ロバート・レッドフォード追悼、第2弾は、『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜 (All Is Lost)』です。
2013年公開のアメリカのインディーズ系映画で、J.C.チャンダー監督。
撮影は2012年なので、レッドフォードは75歳か76歳だ。
この映画、出演者がレッドフォード1人だけということで、大きな話題になった。
インド洋をヨットで単独航海するの男を演じる。
ヨットが漂流中のコンテナに衝突し、浸水してしまう。開いた穴を応急処置したり、無線機を修理したり… 必死に試みるが、どうもうまく行かない。やがてヨットは耐えきれなくなり、男は救命ボートへと乗り移る。
サバイバル映画であり、パニック映画であり、アドベンチャー映画である。ストーリーはこの上なくシンプルだ。ところが、1時間46分、まったく緊張感を失うことはない。それどころかグイグイ引き込まれていく。
『タイタニック』のために建てられたメキシコのバジャ・スタジオの巨大水槽を使ったセット撮影と、実際に海上で行ったロケ撮影が、見事に一体化してリアリティを出している。カメラワークも最高だ。
そしてなによりも、ロバート・レッドフォードの名演・熱演だ。若い頃の演技を見て、「だって、レッドフォードって演技がイマイチなんだもん!」と公言していた私としては、前言撤回どころか、恥じ入るばかりだ(笑)。1時間46分の映画をたった1人で演じきること自体、大変なことだが、一瞬たりとも緊張感が途切れることがない。
ギリギリの局面での、たった1人の闘い。否応なく、「生きるとは…」と考えさせられる。凄い! 凄すぎる!
第66回カンヌ国際映画祭ではコンペティション外で上映され、スタンディンオベーションを受けた。
「『オール・イズ・ロスト』におけるレッドフォードの演技は、アカデミー主演男優賞に値する」との評価もあったが、こちらは、ノミネートにも至らなかった。レッドフォードは、「気にもしていない」と前置きしたうえで、「どんな理由なのかは分からないが、配給元がノミネートのためのキャンペーンを行わなかった」という謎のコメントを残している。
この1本だけをしても、ロバート・レッドフォードは映画名優列伝の上位に名を連ねてよいと思う。間違いなく。
Amazon Prime Videoで配信中。Blu-rayも出てます。
『オール・イズ・ロスト(All Is Lost)』にしても、『さらば愛しきアウトロー(The Old Man & the Gun)』にしても、晩年のレッドフォードは、素晴らし足跡を残していってくれた。

