『夫婦パラダイス』作・北村 想 演出・寺十 吾

敬愛する劇作家、北村想の最新作『夫婦パラダイス』を観てきました。

これ、傑作!
舞台は近未来の大阪河内あたり。対岸には国営賭博場が開業している。その名も「IR paradise」。
主役は尾上松也演じる是野洲柳吉(これやすりゅうきち)。近江の商家、イイとこのボンボンだが、放蕩が過ぎて親から勘当されている。
浄瑠璃を趣味としてきたが、なぜか、シンガーソングライターを目指すことに。浄瑠璃をパンクロックで歌う浄瑠璃パンクなる頓珍漢なチャレンジを。当たるわけがないです。
相方はお蝶。元三味線芸者だが、柳吉を見初めたのか、口説き落とされたのか、ともに河内にやってきた。
演じるは瀧内公美。キラキラ輝いていました。

宣材のボディコピーには、「夢か現か幻か…」と。この芝居、どこまでが現実で、どこからが幻想 …なんて考えることは不粋。夢、現、幻が渾然一体となる北村想の天才ワールドに呑み込まれてしまった。
久々に、不活性化していた脳味噌の一部が痒くなる感覚がありました(笑)。

柳吉、お蝶は織田作之助の『夫婦善哉』の主役2人。一応、脚本のモチーフは『夫婦善哉』ということになっていますが、完全な北村想ワールド。柳吉、お蝶の名を使うことで、織田作へのリスペクトを表したと解しました。

舞台上の是野洲柳吉は、浄瑠璃はもとより、歌舞伎、ミュージカル、さらにはオカルトまで一手にまとめて手玉に取る大活躍。演じるのは大変だが、尾上松也、実に楽しそうに。ホント、凄い役者!
オープニングでは客席から登場で、私の真ん前を通っていった。しっかり目が合ってしまい、ドギマギ(笑)。そして咄嗟に感じた。「顔がデカい!」。名優は顔が大きくなくてはいけないのだ!

途中で気がついた。「浄瑠璃はもとより、歌舞伎、ミュージカル、さらにはオカルトまで一手にまとめて手玉に取る」は、劇作家、北村想の己が姿ではないか!是野洲柳吉は北村想の自画像だ!ちょっとボンボンなところも含めて(笑)。

2日目に観られたいう光栄。想さん本人がロビーにいて、脚本の販売を手伝っていた。思わずサイン本を買ってしまった!

ps.
この芝居を観た翌々日、偶然、柄本明さんと宴会で30分ほど同席。あとから来た柄本さんが、成り行きで私の隣に座った。
助監督時代やテレビで接点があったわけではないので、四方山話。
で、「顔がデカい!」。再度、「名優は顔が大きくなくてはいけない」のだ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です