2018年-戌年『小豆飯』

Azuki-Meshi

2018年、戌年の幕が開きました。

MSLABの『干支の料理』は、イヌの祖先、狼に奉げます。
『小豆飯(あずきめし)』です。
狼を神として崇める複数の神社(三峯神社・宝登山神社など)で神饌として使われます。

なぜ、狼が神格化されているのか… 『赤頭巾ちゃん』を引くまでもなく、西洋では、狼は家畜や時には人間までも襲う恐ろしい動物として、忌み嫌われてきました。

一方、日本では、オオカミ=大神ですから、月夜の晩に山から聞こえる遠吠えを神の叫びと畏れたのでしょう。
しかし、それだけではありません。農作物を食い荒らす鹿やイノシシ、猿などの害獣を駆除してくれることから、田畑を守る益獣と考えられてきたのです。 小豆飯の米と小豆は、豊穣の象徴でしょう。

小豆飯のレシピはシンプルです。
小豆を下煮して、その煮汁とともにうるち米に混ぜて炊きます。炊くときに塩少々を加えると食べやすくなります。赤飯ほどは美味しくありませんが、素朴な味わいは、不思議な懐かしさを呼び起こしてくれます。

本州、四国、九州に生息していたニホンオオカミは明治末期に絶滅しました。開発による生息域の減少、西洋犬の導入に伴う新たな家畜伝染病の流行、毛皮などを目的とする乱獲等が原因と考えられます。ニホンオオカミが絶滅すると、天敵がいなくなった鹿やイノシシが急増。農作物への被害が拡大しました。 人間の行為が生態系を破壊し、そのつけが人間に回ってくるという悪循環。消えたニホンオオカミはその象徴とも言えるでしょう。

小豆飯を噛みしめるうちに、ローンウルフとなり山野を駆けたい気分になってきました。いやいや、目指すべきは群れる狼か… 狼になりたい!なんて言うと、眉をひそめる向きもあるかも知れませんが、右向け右の羊の群れに身を潜めるのは、もう辟易としてきましたね。

2006年-戌年『狗不理包子』

gou bu li bao zi

2006年は戌年。難関である。 実は、『MSLABの干支のお料理』は2005年の酉年から二巡目に入っています(最初の二年は、もろもろデジタル化が進んでいなかったため記録が残っていない)。1994年の戌年は、ホットドッグでお茶を濁して、まことに不評でした。

さて、2006年。「戌」「犬」「狗」で探し回った挙げ句、たどり着いたのが「狗不理包子」。「犬肉の包子」でもなければ、「犬も振り向かない包子」でもありません。天津名物のちょっと小振りの肉まんです。

狗不理包子の名は、狗子という包子職人の名前に由来しています。
狗子が天津の包子屋に就職したのは14歳、1845年のことでした。狗子の作る包子はとても美味しく大評判に。一心不乱に包子を作り続ける狗子を見て、客たちは「狗子は包子作りに精出して、それ以外の事に一切構わない(不理)」と噂したとか。

「天津に行っても、狗不理包子を食べなければ天津に行ったことにならない」とまで言われる狗不理包子。西太后や毛沢東もその味を愛しました。

さて、レシピですが…
薄力粉とドライイーストを使って、普通の中華饅頭の生地を作ります。餡は、豚肉と長葱だけで、胡麻油と醤油でしっかり味付け。豚肉はひき肉ではなく、包丁で小さめの細切れを作るのが絶対です。今回は、隠し味に腐乳と芝麻醤を使いました。
包むのが難しいかなと思いましたが、まぁ「破けない」というのをOKラインとすれば、何とかなるものです。

一心不乱の集中力が生んだ狗不理包子。百個食べたからといって、雑念や煩悩から脱することができるわけではありませんが、なにやら教訓含みの包子ではあります。