2014年-午年『馬肉のロースト』

Horsemeat Roast with Blue Cheese-Horseradish Sauce

mslab恒例の”干支のお料理”。20年目の2014年、午年を迎えました。

馬肉料理と言えば熊本の馬刺しに江戸の桜鍋と国内にもいろいろありますが、日本列島だけではありません。旧モンゴロイド系の遊牧民・騎馬民族の文化が及んだ地域には、豊かな馬肉食が残されています。 その中でも、おそらくマジャール人(現在はハンガリーを中心に北ヨーロッパに広く暮らす)を経由して今日のヨーロッパに伝わった馬肉料理のひとつがローストホース(Horsemeat Roast)でしょう。

レシピは、ローストビーフとほぼ同じですが、肝心なのはタラゴン(仏:エストラゴン)を贅沢に使うこと。個人的には、豚肉にはローズマリー、馬肉にはタラゴンと決めています。 独特の甘さと苦さが青草を感じさせるタラゴン。ロシア南部や中央アジアに自生するハーブです。そこは、かつて遊牧民が馬で駆け抜けた地域。タラゴンと馬肉の素晴らしい相性は、偶然ではないのでしょう。

では、少しだけ詳しいレシピを… たこ糸で巻いて形を整えた馬もも肉の塊に、やや強めの塩と胡椒少々、たっぷりの乾燥タラゴンをすり込み、さらに赤ワインとオリーブオイルを加えます。この時に使う赤ワインは、スパイシーな香りがあるテンプラリーニョやシラーが合います。ビニール袋に入れて、半日から1日、冷蔵庫でマリネします。 あとは、フライパンで軽く焼き目を付けてオーブンへ。馬肉の大きさにもよりますが、180℃で30分から40分。焼き上がったら、アルミホイルに包んで30分ほど肉を休ませます。
次はソース。今回は、カナダのグルメサイトで見つけた”ブルーチーズとホースラディッシュのソース”です。生クリームに白ワイン少々を加えてゆっくりと煮詰め、細かく砕いたブルーチーズとすり下ろしたホースラディッシュを加えて一煮立ち。

“Horsemeat Roast with Blue Cheese-Horseradish Sauce”の完成です。
ユーラシアの大地を駆けた遊牧民。乗った馬の乳は馬乳酒となり、必要なときにはその肉も食べました。「馬は乗るものであって、食べるものでない」などというアングロサクソンの気取りとはほど遠い、自然との共生思想がそこにあります。食べてあげることが馬への感謝でもあるのでしょう。 あまりに人工的で不自然な霜降り牛肉に現を抜かす… それが至高の肉食だとしたら寂しいでしょう。筋肉の塊で脂のほとんど無い馬もも肉のローストを噛みしめるとき、草の香りと野の風を少しだけ感じたような気がしました。

2002年-午年『タルタルステーキ』

tartar steak

正月恒例『mslabの干支の料理』!2002年午年は、タルタルステーキに挑戦です。
八世紀に現れた蒙古系部族・韃靼人(ダッタン人=タタール人)がヨーロッパに伝えたとされる料理で、生の馬肉を細かく叩き、玉葱などのみじん切りを加えただけの簡単な料理ですが、これが美味い!

生肉を食べる習慣の無いヨーロッパにしっかりと定着し、今日でもタルタルステーキは、パリのブラッセリーで普通にメニューに載っています。

一方、ドイツでは、ハンバーグのルーツはタルタルステーキだという説が有力で、これまた驚異の韃靼人パワー!
『韃靼人』は、後に蒙古民族の総称として用いられるようになり、さらに文学的には(!?)モンゴロイド全体を指す呼称とされることもあります。いずれにしても、我らモンゴロイドの代表選手というワケです。
グローバリズム一点張りの昨今に、タルタルステーキこそがモンゴロイドの誇りを呼び覚ます!なんて考えると、包丁を持つ手にも力が入ります。

さて、タルタルステーキを作るにあたり…
馬肉は信州からでは面白くないな~と思いながらネットサーフィンしていたら、なんとモンゴルの馬肉を販売しているサイトを発見!無農薬の乾草によって肥育されたオーガニック馬なんですね。コレが!韃靼人のタルタルステーキのために、これ以上の馬肉は無いでしょう!かくして我が家の台所にモンゴルの風が吹く!というワケです。

レシピ:
解凍した馬肉をとにかく細かく切り刻みます。目安としては、粗めの挽肉って感じです。そこに玉葱、ニンニク、ケーパー、キュウリのピクルスのみじん切りを加え、オリーブオイルと塩胡椒で味を整えながら混ぜ合わせれば完成です。
生卵の黄身を載せてユッケ風にするレシピもありますが、遊牧民に生卵はないだろうと云うことで、今回は卵なしで作ってみました。