2022年-寅年『シータイガーのピルピル』

Gambas al Pil Pil

なにやらオミクロンな状況で迎えた2022年…と意味不明なフレーズから始めたくもなります。コロナ禍2度目の新年となってしまいました。

2022年は寅年。MSLABの干支の料理にとっては最大とも言える難関です。
1998年は「虎魚(オコゼ)の造り」、2010年は「虎豆煮」。
どちらも頭を振り絞って考え抜いた末でした。果たして寅(虎)がらみ3つ目の料理はあるのか???

ブラックタイガーという海老がスーパーで幅を利かせていることは知ってましたが、養殖だしなぁ~
と思っていたら、シータイガーとかホワイトタイガーと呼ばれる大きめの天然車海老があった!
産地によってオーストラリアタイガーとかインドタイガーとか呼ばれる場合もあります。
おお!インドの猛虎!タイガー・ジェット・シンか!
頭の中に満ちていた虎料理の白い靄が霧散するこの快感!

手に入れたのはシータイガーと銘打たれたちょっと大きめの冷凍海老。さて料理は…
正月とは言え単に海老の塩焼きじゃ…
で思いついたのが、スペイン料理『Gambas al Pil Pil(シータイガーのピルピル)』。

材料は、シータイガー、オリーブオイル、唐辛子、ニンニク、粉末パプリカ、粉末パセリ、生パセリに塩少々のみ。
唐辛子以下は調味料的なものなので、主演=シータイガー、助演=オリーブオイルの世界です。
“Pil Pil(ピルピル)”というのはエビを揚げるときの音からとった料理名。
日本ではアヒージョ(Ajillo)と呼ばれることが多いですが、スペインではアヒージョでもピルピルでも通じるそうです。

調理に使うのはカスエラという耐熱陶器。直火OKで、スペインや南米で日常的に使われる調理用具兼食器です。

レシピをご紹介しましょう。
□ 海老の殻を剥いて背腸を取り除く。
□ カスエラにオリーブオイルを注ぐ(スペイン語のレシピサイトには「“法外な量”のエキストラバージンオリーブオイルを使う」と書いてありました(笑))
□ ニンニク薄切りと唐辛子を低温で揚げ、風味をオリーブオイルに移す(ニンニクは薄切りが最適。丸のままだと風味が出ないし、みじん切りでは焦げやすい)。
□ ニンニクと唐辛子を一旦取り除き、オリーブオイルの温度を上げる。
□ 軽く塩をした海老を投入。すぐに“虎縞模様”が浮かんできます。
□ 「Pil Pil Pil Pil Pil Pil…」という心地よい音が響きます。高い音になってきたら揚がった証拠。ニンニクと唐辛子を戻し、粉末パプリカ、粉末パセリを投入。
□ 火を消して生パセリを飾ったら『Gambas al Pil Pil(シータイガーのピルピル)』の完成です。

海老そのものが美味しいのはもちろんとして、バゲットをちぎってオリーブオイルに漬けて食べ出したら、もう止まりません(笑)。

さてさて今回は冷凍とは言え天然の海老を入手することができました。普段から魚介類は淡水魚と貝類を除いて養殖物には手を出さないようにしています。
天然の淡水魚はベラボーに高い(笑)。貝類は養殖と言っても紐や籠で海中に吊ってるだけだから、まぁイイかと。
一方、天然物の海産魚が今本当に豊富かというと、本マグロの問題があるのはご存じとおり。地球温暖化の影響でこれまでの漁場で穫れなくなっている魚もあります。
漂うマイクロプラスチックと穫れなくなっている魚。人類は結局自分で自分の首を絞めているのでは… と大きな話になってしまいます。
水平線を見ると無限に広く感じる海ですが、もちろん有限。その中でも魚が採れる海域は限られています。
どこかで本格的にブレーキかけないといけませんね。

では、〆はスペイン語で、
!Te deseo un Feliz Ano Nuevo 2022!
2022年が幸せな年になりますように

★動画(2分22秒)もアップロードしました。
https://youtu.be/SAq4nxBsfrs
絵と共にPil Pil音もお楽しみください。

2010年-寅年『虎豆煮』

Toramame-ni

2010年は寅年。一回り前は「虎魚(オコゼ)の造り」でなんとかクリアしましたが、果たして、他に虎がらみの食材や料理はあるのか… かなりの難関でしたが、ありました! 「虎豆」です。さっそく、北海道産のものを仕入れました。

インゲン豆の仲間で、白地に黄褐色の斑模様が特徴。この模様を虎に見立てて虎豆と呼ばれ、美しい豆です。味も上々。煮豆にするとポクポクと歯触りが良く、「煮豆の王様」と呼ばれるほどです。

下処理は、一晩水に浸して十分に膨らませ、戻し汁に少量の塩と重曹を加えて茹でます。味付けは甘煮が王道ですが、シンプルに昆布と塩だけで炊いても美味しいです。よりシンプルに行くなら、茹でたてに塩をまぶしただけの塩虎豆。豆そのものを味わうならこれが一番。上出来の枝豆風味で、お酒のつまみに最高です。

虎豆を味わいながら、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の格言を思い出し、今年は冒険の年とするか、それとも「まめ」に働いて「虎の子」をため込むか(笑)。いやいや、「虎の威を借る狐」にだけはなるまいと自ら戒めるもよし。いずれにしても、虎に絡む名言や格言が古くから伝えられています。2010年は、虎とともに温故知新でしょうか。

1998年-寅年 虎魚(オコゼ)の造り

 

Okoze no Tsukuri

1998年、mslab新年恒例の「干支の料理」は? 寅年とはいえ、虎のステーキてなわけにはいきません。ワシントン条約でお縄になるのは御免ですから。 漢方では「虎の陰茎を干したもの」という恐ろしげな食材(薬剤?)もあるそうですが、超高価な上に日本では入手不可能でしょう。 …というわけで、今年の料理はオコゼとなりました。オコゼは漢字で「虎魚」、無理矢理ですが許せる範囲か!?

さて、虎魚… 奇々怪々な容姿に似合わず、すこぶる美味なこの魚、一般に夏が旬とされていますので、まず入手が大変。とりあえずインターネットで島原に虎魚を扱う魚屋があるのを発見。オンラインショッピングまでは扱っていなかったので、あとは電話とファックスです。クール宅急便で送られてきた島原の虎魚は、毒ヒレだけを取り除いた丸の姿。やはり迫力の外見です。 ところで、虎魚の毒ヒレは「指先を刺されただけで、腕一本腫れあがる」とか「相撲取りでも泣く」と言われるほどのもの。これはもう素人の手には負えません。虎魚料理に挑戦される方は、是非お気をつけください。

不細工な外見と背鰭の猛毒は、美味しすぎる身を持ってしまった虎魚の自衛手段なのでしょう。しかし、猛毒を隠し持ちながら海底に潜んで餌を待つ。そんな生き方は私には向きませんね!?

レシピ:
虎魚料理と言えば、まず薄造りです。
三枚に下ろしたら皮を引いて、丁寧にそぎ切りしていけばOK。フグのようにコロコロとした体型なので、比較的下ろしやすい魚です。皮も簡単に引くことが出来ます。 白身の薄造りが出来たら、皮と肝、さらに胃袋もお忘れ無く。これらを茹でて細切りし、薄造りに添えるのが本格的です。
湯に投じたとたんに膨れてくる皮は鮟鱇に似た感じ。胃袋もそれなりです。しかし、特筆したいのは肝。新鮮なせいもあったのでしょうが、クセや臭みが一切無く、今まで食べた魚の肝の中では、最も美味でした。「肝臓はかくありたい!」「γ-GTPはきっと正常値なんだろう」などと関係ないことを思い浮かべてしまいました。
残ったアラは当然、味噌汁。昆布だしに九州の麦味噌、日本酒少々を加えて煮込めば出来上がりです。味噌汁は沸騰させてはいけないと言いますが、こと魚の味噌汁に関しては、それは当たりません。味噌の味が魚に少し染み込むくらいで良いのです。