“奇跡のぐい呑み”は、備前の引き出し黒

いささか手前味噌になってしまい恐縮ですが、最近入手したこの器、“奇跡のぐい呑み”と勝手に呼んでいます。
溶岩が成り行き任せで固まって、たまたまうまい具合に凹みができて、それがまたうまい具合に、ポロッと折れてできたような… きわめて野趣溢れる一品です。

備前の作家、藤原章さんの作品。ドロッと掛かる緑がかった黒のガラス質は、釉薬によるものではなく、自然釉(薪や粘土から生じたガラス質)です。「備前と言えば無釉(自然釉はあり)」ですが、ここまでポッテリした自然釉には、初めて出会いました。藤原さんに直接確認したところ、「天然の雑木灰(緑に発色)と鉄分の多い山土(黒には発色)がねつで解けて光沢が出ております」との解説。
地肌はグレーというか、銀色に輝いています。「焼成中に窯の中から高温状態の器を引出し急冷する」という、“引き出し黒”ならではの発色。赤茶色が通常の備前焼の中では、異彩を放つ存在でしょう。

さてさて、造形だけを見るとシュールでアグレッシブな“奇跡のぐい呑み”ですが、驚くべき実用性が隠れていました。形が歪なので、変なところから呑もうと思うと呑みにくい。しかし、指が収まる場所が計算されていて、その凹みに親指と人差し指を入れて傾けると、お酒が実に飲みやすい角度で口中に流れ込んでくるではないですか!
いやはや脱帽!大切に使っていこうと思います。

灯台もと暗し

灯台もと暗しでした。
わが家からきわめて近いところに、東京の名酒があったのです。東村山市の豊島屋酒造。醸造を始めたのは昭和初期ですが、ルーツは1596年に江戸の神田鎌倉河岸で始めた一杯飲み屋だというのが、なんとも嬉しい。関ヶ原の4年前だぜぇ!

何種類かの銘柄を作っていますが、フラッグシップはこの酒。『屋守』と書いて『おくのかみ』。通称はお察しの通り、“やもり”です。

今回飲んだのは、“中取り”。中汲みと同義で、日本酒を絞るときに、中程で得られる透明度の高い酒です。香と味のバランスに優れ、日本酒の「良い部分」と言われています。品評会に出てくる酒は中取りが多いそうです。

さて、屋守の中取り、色はほぼ透明。無濾過でこの色を出せるのは、中取りだからこそです。
見事な吟醸香が漂います(吟醸じゃないのに(笑))。酒米は広島の八反錦。香り高いとされる八反錦の魅力が存分に生きています。
生原酒をそのまま瓶詰めしているので、微発泡しています。味は濃厚でやや甘め。この甘さと微発泡が絶妙のバランスを醸し出します(二日に分けて飲んだので、二日目は微発泡が消えて、個人的にはちょっと甘過ぎになりました)。
そして驚いたのは、濃いけど、良い水の味がする!もちろん、水っぽいという意味ではありません。濃厚な日本酒の味わいの中に、間違いなく美味しい水の味がある。それが、この酒の品の良さにつながっている気がします。

蔵の見学も受け入れてるようなので、近いうちに行ってみようかな…

東京の名水 東京の酒

評判の好い東京西多摩野崎酒造の『喜正(きしょう)』をやっと飲むことができました。
立川のそば屋で出会った純米吟醸はグレープフルーツを思わせる果実香(吟醸香)で、「これが噂の喜正か!」と唸るのみ。帰りに立川駅の成城石井に寄ったら、純米吟醸と純米の四合瓶が。「酒米は磨かない」派の私としては、純米に手が伸びます。
喜正純米は、純米吟醸とは打って変わって、米の香りを残す旧き良き日本酒。ふつう、同じ蔵だと、吟醸酒と普通の純米酒で同じ方向の味が出ていることが多いものです。吟醸はより上品とか… しかし喜正に限っては、まったく違う方向に矢印が伸びている。純米にはまったくと言ってよいほど果実香はなく、“米”を楽しむことができます。「てやんでぇ、吟醸香なんてチャラチャラした味わいは、日本酒にはいらねぇんだい!勝負は米の味だぜ」みたいな(笑)。ちなみに酒米は五百万石です。

さてさて、ここからが本音。喜正純米、冷やで飲むと、やや糠臭さを感じる。これを“旧き良き”と評することもできますが、昨今の流行としては、ちょっと辛いかも… 翌日にぬる燗で飲んだら、これ最高!米の香りに包み込まれるようでした。

野崎酒造があるのは、あきる野市戸倉。かつて五日市町に属し、その前は戸倉村でした。秋川が近くを流れ、仕込み水は戸倉城山から湧く伏流水100%だそうです。東京の名水が生きる酒とも言えそうです。

昨今は、進駐軍が残していった有害物質を除去できない豊洲へ中央市場の移転を強引に進めようとする知事がいたり、オリンピックに向けて、とあっちこっちを掘り返したりと、「開発のための開発」は目を覆うばかり。そろそろ、スクラップアンドビルドから脱却しないと。ホントは、その最先頭に東京がいないといけないのに… 東京の銘酒を口にして頭をよぎるのは、そんな想いでした。

北総大地の自然栽培酒米が王道の純米酒を支える

今宵の酒は、1980年代に始まる純米酒ブームを牽引してきた埼玉県蓮田の神亀酒造が造る『真穂人』。
酒米は有機肥料だけで育てた五百万石。精米度を60%と低く抑えて、米の味と香りを生かしています。産地は成田空港の近く。かつて三里塚と呼ばれた地域で、先進的な農家が生産しています。
『真穂人』。ぬる燗で呑むと、最高の日本酒です。

神亀の蔵主は、「下手な山廃より、出来のよい速醸」と主張します。確かに速醸法なのに、心地よい酸味と深い旨味があります。山廃ファンの私としては、その酸に引きつけられているのかも知れません。

注目したいのは酒米を作る農家。三ノ宮廣さん、石井恒司さん、小川進さんの名前にピンときたら、あなたは結構な事情通(なんの事情かは言いませんが(笑))。しかし、北総大地の原則的な農民たちは、今も、原則的な農業を守り続けている。これは事実なのです。

純米酒という日本酒の原則にこだわる神亀酒造と、北総の農民との出会いは、おそらく偶然ではなかったのでしょう。

 

上燗徳利という道具

最近入手した錫の上燗徳利。錫の酒器というとチロリが浮かびますが、珍しく典型的な徳利型。大阪錫器の製品です。新品では2万円以上しますが、骨董市で1/10以下の値段で入手。おそらく、骨董屋主人の目利き違いでしょう(笑)。ずっと欲しかった道具なので大ヒット!

日本酒の燗には、熱燗=50度前後、上燗=45度前後、ぬる燗=40度前後、人肌燗=37度前後、日向燗=33度前後などがありますが、もちろん、45度前後の燗付け専用ではありません。私の場合は、ほぼぬる燗か人肌燗です。
上燗という言葉には「ちょうどいい加減の燗」という意味もあって、要するに「美味しい燗」。
そう言えば、時々立ち寄る、新宿三丁目のおでん屋は『上燗屋 富久』。この店には、おそらく4合以上入ると思われる大きな上燗徳利があります。それを使って、主がみずから燗を付け、蛇の目のぐい呑みに注いでくれます。店名と上燗徳利に関係があるのかどうかは分かりませんが。

で、なぜ錫の徳利がよいのか… とにかく燗の付きが速いのです。これは熱伝導率の良さによります。陶器の徳利だと、なかなか温まらなくて、気がついたら、アッチッチ!なんてなりがちですが、錫の場合は30秒もあればぬる燗程度になります。もちろんお湯の温度によりますが。
家庭で燗酒が広まらない理由のひとつは、燗付けの面倒さ、難しさにあると思いますが、錫の酒器は、その問題をかなり解決してくれます。
慣れてくると、徳利の首や肩の部分を触っただけで、燗の付き具合が分かるように。徳利を通して日本酒と会話する。そんな趣です。
徳利(錫でも陶器でも磁器でも)で燗を付けると、どうしても上の方の温度が高くなります。これは、2つの徳利を使って酒を行ったり来たりさせることで解消します。大きめの徳利を使えば、軽く揺するように廻してあげるだけでも、温度は平均化します。

今や日本酒の飲み方と言えば、冷やが圧倒的な主流ですが、常温やぬる燗でこそ、味わいのある酒も、たくさんあります。上燗徳利を携えて、今宵も、あらたな旅に出ることにしますか(笑)。

東京の酒もなかなか

散りゆく桜に涙してというわけではないが、なんとなくラベルに惹かれて、今宵の一杯は嘉泉(かせん)の『東京和醸』。
淡麗系。精米歩合は60%とやや低めですが、糠臭さはなく、ほのかな酸味と果実香が心地よいです。
初めての酒は、色を見るために、必ず蛇の目の一合猪口で飲むのですが、ほとんど無色。活性炭を通しているのでしょう。雑味はほとんどありません。善し悪しは人それぞれですが(笑)。水の良さは感じます。

東京福生の田村酒造場。創業文政五年だそうだ。
東京にも、『澤乃井』『多満自慢』をはじめとして、いい酒があります。私の中では、『嘉泉』も仲間入り。個人的な好みとしては、もう少し骨太になるとさらに愛せるのですが

広島の八反錦と佐渡の朱泥焼締め

 

 

今宵の一杯は『華鳩』。広島、呉の酒です。

八反錦純米吟醸中汲み。「中汲み」というは、絞りはじめの「あらばしり」でもないし、最後に絞りきるため度数と雑味が強くなる「責め」でもないと。まぁ、日本酒の本体(本流?)と言ってよいのでしょう。普通、日本酒は、「中汲み」に「あらばしり」と「責め」をブレンドして作ります。「中汲み」は、見た目では透明度が高く、澄んだ味わいになります。

八反錦(はったんにしき)ってなんだ?主に広島県で栽培されている酒米。前に紹介した岡山の雄町(おまち)よりもマイナーです。八反錦の酒は「香りが高く、淡麗な日本酒に仕上がる」といわれています。

確かに、精米歩合は低めの55%なのに、しっかりとした吟醸香。これはいい!
一方、華鳩に関しては、八反錦の通説に従った淡麗さはありません。濃厚とまでは言えませんが、しっかりと旨味を発揮。おまけにほどよい酸味。実に見事に角が取れているのですが、今流行の日本酒のど真ん中ではない。「辛すぎず、香り高く、酸味を表に」という明確な方向性があります。
またまた反山田錦の血が騒いでしまいました!(笑)。

寄り添うぐい呑みは、佐渡の無名異焼、細野利夫さんです。朱泥の焼締めなので、常滑かと見まがいますが、これは佐渡の赤土。江戸時代に、金山銀山の残土から生まれたそうです。私からすれば、この赤土、金銀よりも、よほど価値がある!
佐渡の朱泥と八反錦の華鳩が、不思議とマッチした夜でした。

 

芳醇旨口のスパークリング

cimg0297やけに人気の日本酒、『獺祭(だっさい)』。山口県岩国の旭酒造です。
杜氏無し、コンピュータコントロールの酒造りで注目され、磨き二割三分とか三割九分とか、山田錦を磨き上げた吟醸酒を自慢にしています。吟醸香と言われる果実香が強く前面に出て、ワインに親しんだ欧米人にも、日本酒にあまり親しみのない日本人にも(笑)、受けるのは納得。ただ、個人的な好みとしては、甘過ぎです。

昨今、日本酒の世界では、「甘口復権」と言われています。しかし、「甘口」と「旨口」を混同してはいけません。濃厚系の代表格『菊姫』(石川県白山)が主張するのは「濃醇旨口」。『獺祭』は「芳醇旨口」と言われますが、私に言わせれば「芳醇甘口」。何かが足りない。あるいは、フルーティな「芳」が強すぎるのか…

しかし、その獺祭で頭を下げざるをえないのが、「発泡にごり酒 スパークリング50」。久々に近所のスーパーに登場。気がついたら買い物カゴに入ってました(笑)。
この酒は、果実香と炭酸の辛さのバランスが絶妙!当然のことながら、上澄みだけ飲むのと、にごりと上澄みを混ぜて飲むのでは味わいが異なります。上澄みだけ飲むと、獺祭ならではの甘さが全面に出てくるので、私流は、最初の一口だけ上澄みを飲んだら、ゆっくりと瓶を回して、にごりを全体に馴染ませます。こうすると、品は少し下がりますが、日本酒らしい米の味が出てくるんです。たぶん、獺祭にしては低い50%という精米度が影響しているのでしょう。

しかし、杜氏なしの日本酒造りは、日本酒文化と呼べるのか?それは、浅薄な文明に過ぎないのではないか… 深い疑問を抱えつつも、今宵は獺祭スパークリングを楽しみました!

 

磨きすぎない日本酒もまた良し

CIMG0147こざっぱりとしたラベルと、酒米が雄町(おまち)だというのに惹かれて、初めて買った『ふた穂』。奈良の長龍酒造です。雄町発祥の地、岡山県の高島地区(現在の岡山市中区の一部)産の酒米を使っています。

際立った特徴はありませんが、きわめてバランスの良い穏やかな味わい。能書き言わずに静かに飲みたい酒だ(といきなり自己矛盾(笑))。やや辛口で、ほどよい酸味。米らしい味わいがあります。色はやや黄色がかっていて、おそらく濾過してないでしょう。

雄町は、現在使われている酒米の中で、もっとも古い歴史を持っています。江戸時代末期、鳥取か岡山の山奥で栽培されていたものを当時の高島村雄町の農民が、二穂だけ分けてもらって持ち帰り、優れた酒米に育てあげたそうです。てなわけで『ふた穂』なんですね。

どうも、山田錦一点張りに反抗したくなって、五百万石とか雄町とか、なんとなく手が伸びてしまいます。磨きに精魂傾けた日本酒が多い中、あえて磨きすぎない酒造りに挑戦する長龍酒造に乾杯!

 

松江の李白

CIMG0109きょうの日本酒は、これ!頂き物の“李白 純米大吟醸 新宿八雲”。
李白酒造は松江の酒蔵で、以前から好きでした。“新宿”は“しんじゅく”ではなく“しんしゅく”と読むそうですが、そのいわれには、たどり着けず(新宿の京王百貨店限定だそうなので、そこには引っかけてあるようですが)。
“八雲”はもちろん、松江に長く暮らした小泉八雲にちなんでます。

さて、“李白 純米大吟醸 新宿八雲”、その味わいは?
見事とも言える吟醸香!溢れんばかりの果実香、果実味をまとっています。しかし、淡麗ではない。「大吟醸も方向性が変わってきたな」と実感です。濃厚さ+ほどよい酸味、加えて吟醸香ですから、こりゃたまりません!(笑).

ぐい呑みは備前焼人間国宝の伊勢崎さんの作品(陶磁器業界で言うところの、いわゆるB級品ですが)。なぜか?この酒の頂き先が、たまたま伊勢崎さんという名字だったので、この際だからと、引っかけました(笑)。

小泉八雲の孫の小泉凡さんには、『美の壺』の取材でインタビュー取材をしたことがあります。とっても穏やかな、素晴らしい人でした。
そう言えば、松江城が国宝になったというニュースもありました。

いろいろと思い出す一人一献です。今夜は。

錫のチロリ

CIMG0038買ってしまった!錫のチロリ。
ずっと欲しかった大阪・錫半のものが、池袋西武の骨董市に格安で。最新のデザインではありませんが、それが良いのです!
なんぼでっか?不粋なので具体的な値段は明かしませんが、もし、今、新品があるとしたら、その5分の1くらい(これを明かすだけで十分不粋か(笑))。取っ手が本来は竹巻なのですが、プラスチックに変えられています。ここだけ残念。
ワイドレンズで撮っているので大きさが分かりにくいかと思いますが、見た目は小さめ。しかし正一合どころか、すり切りまで入れると200cc入ります。

CIMG0049さっそく、ぬる燗です。
今日の日本酒は、神奈川の『丹沢山 純米』。うまい!
しかし、正直に白状してしまうと、これまで日本酒は99%、冷やで飲んできました。ぬる燗であっても、燗をつけてしまうと違いが分からない!?いえいえ、良い日本酒は燗をしても、絶対にあのツンとするアルコール臭は立ってきません。そこまでは分かっているつもりなのですが、しかし、その先は…
極めねば!

順番が逆かも知れませんが、このチロリを燗酒を知る入り口にしようと思っているのです。

 

 

 

その名は Début

CIMG2122珍しい日本酒を飲みました。
福岡県久留米市、若竹屋酒造場の『Début』。家の近所にある、ちょっとこだわりの酒屋で購入。曰く「ワインの味わいを目指した日本酒らしいです」と。
なるほど、瓶はワインボトル様で、ラベルはまさにワイン。その名も「Début」(デビュー:初登場、初舞台の意)はもちろんフランス語。

飲んでみると、全然ワインではない!(笑)精米度が75%と低いので、しっかりと米の味のする日本酒です。
調べてみると、蔵は元禄12年(1699年)創業、酵母は明治28年(1895)に史上初めて分離された清酒酵母の源菌を使っているそう。この酒、いわれが深いぞ!

瓶に惹かれて、最初はワイングラスで飲んでみましたが、香り(におい)が強くなりすぎて、これはNG。麹そのものにおいが、やや漬け物的にも…
一般的に日本酒はワインよりも香りが強いので、「香りを溜める働き」を強めたワイングラスで飲むと、本来の味わいを邪魔するにおいが立ってきます。
日本酒は、ぐい呑みから香りをこぼしながら飲むのがよいのです。そして、そのこぼれる香りが魅力的であってこそ日本酒なのです!おそらく。

さて、王道ともいえる蛇の目のぐい呑みで味わうと… 淡麗系だが、酸味が強め。精米度は低いのにしっかり果実香があります。深い味わいです。
無濾過生原酒なので、色は黄色目。度数は17度もあるので、チビチビと。

ところで、
なぜ、Débutなの?
なぜ、ワインボトルなの?
蘊蓄自慢があってよいはずなのに、若竹屋酒造場のホームページ(14代目当主の個人ページ)には、なにも書いてありません。だいたい、この酒=Débutに関する記述が一切ない!
年間100本しか出さない酒らしいので、変に注目されても困るのか…
逆に、発信しないことの強み、発信しないことの価値を感じてしまいます。
えっ、ここで私が書いていること自体が本末転倒(笑)。
なんとも、いろいろと考えさせられる一本ではありました。

宝山蒸撰紅東酒精乃雫

20050710やっと、宝山蒸撰紅東酒精乃雫(通称「宝山紅東」)を口にした。
これは凄い!
34度なので五分五分の先割りを一昼夜前に作っておいて、オンザロックと飲み比べたが、五分五分でも芋の風味が薄れていない。逆にアルコールが強く当たらない分、先割りの方が旨い!口に含む前の香りだからアロマか… これが見事に来る。

それにしても、6:4の割は誰が決めたのだろう。確かに薩摩系の25度の芋焼酎を6:4にすれば15度になって、日本酒程度のアルコール度数になる。宮崎系の20度を6:4にすれば12度だから、これはワイン程度だ。食中酒としては日本酒やワインは実に良くできて、このアルコール度数は黄金律とでも言うべきものなのだろう。

さて、宝山紅東をどう割るか… 6:4では濃すぎるのは明白だ。「あまり薄くしすぎてももったいない」という貧乏根性がはたらいて、とりあえず五分五分で割ってみた。日本酒の原酒並の度数ということだ。次は4:6で試してみようか… 度数的にはOKだが、やはりちょっともったいないかな。

和をもって… 先割りの話

芋焼酎をどう飲むか… かつてはお湯割りが当然だったが、ここ数年のブームの中で出てきている少しばかり上品な芋焼酎は、ロックや水割りなどでも楽しめる。
そこで、先割り。焼酎を飲む数日前に水で割っておくと美味しくなると言う。「ホントか?」と思っていたが、ホントだった。

芋にしても、米にしても、麦にしても、若干の油分を持っている。その植物起源の油分は蒸留酒である焼酎にも微量だが残るそうだ。そして、油分にしか融けない香りや味がある。これが水分やアルコールと馴染むまでには時間がかかる。宮崎県日南市の芋焼酎メーカーで聞いた話なので、間違いないだろう。

蔵での焼酎造りでは、蒸留仕立ての原酒(70度以上ある)に水を加えて焼酎にする。この作業を「和水(わすい)」と呼ぶ。「加水」でないのがなんとも嬉しい。どこの蔵でも「和水」に最低三週間の時間をかける。理由は上記の通り。「和」とは、こういう時にこそ使う言葉だと思う。

私が出会った蔵の社長は「先割りは理にかなっています。蔵で行う和水と同じですから」と語ってくれた。最低一昼夜、できれば一週間以上置くと、先割り焼酎は抜群に旨くなる。先割りもまた「和(=「なごみ」と読みたい)」を生む。

私は最近、6対4の先割り焼酎を冷蔵庫で冷やしておいて、氷を使わずに大きめの猪口で飲むスタイルにしている。これなら飲んでる途中に薄まることもない。ささやかな「和」の時である。